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by ruhiginoue

前提が映像化なのか書籍化なのかの違い

 映画『やわらかい生活』の脚本の出版を、原作者の小説家・絲山秋子氏が拒否したのは不当として、脚本を手掛けた荒井晴彦氏が「シナリオ作家協会」とともに、絲山氏に対し、出版妨害禁止や1円ずつの損害賠償などを求める訴訟をしていた。
 この判決で東京地裁は10日、「映像化に関する許諾と活字化を同列に扱うことはできない」として請求を棄却したそうだ。
 まず損害賠償の請求1円とは、民事訴訟の形式として金を請求する体裁にするためで、ほんとうに求めているのは出版のほうだ。
 しかし、小説の著作権者である作家が、そのシナリオ化を許諾したのはあくまで映画化しての公開を前提としたもので、同じシナリオでも本にして発行することは前提としていない。
 そして、著作使用料が入るのは同じとしても、さらに作家にとって映画化は自著の宣伝にもなり利益を生むが、脚本の出版は書店で原作本の隣に並べられて競合関係になってしまうから困ることがある。
 また、映像化ならではの脚色がされることがあり、その印象の強さで原作に存在しない部分が一人歩きして、作家が誤解を受けて困ることがある。
 例えば、『鬼龍院花子の生涯』で一番有名なのは、「なめたらいかんぜよ」とタンカをきる場面だが,これは原作にはなく、脚本を書いた高田宏治による脚色である。
 ところが夏目雅子の熱演もあって有名になりすぎ、原作者の宮尾登美子はこの話題がでると心苦しそうにしていた。『徹子の部屋』に出たときなど、黒柳徹子が原作にもともとあるセリフだと思い込んで話題にし、宮尾登美子はどう対応していいのか困った様子だった。
 他にも、高田宏治は『極道の妻たち』の脚本でのことたが、家田壮子のノンフィクションが原作で、これが最初は松竹で映画化の話があり、松竹らしく女性メロドラマ路線で映画化の話だった企画が流れてしまい、それが東映に渡ったので、東映らしく任侠ヤクザ路線の映画化となり、岩下志麻が拳銃持って「覚悟しいや」と怖い顔して脅すことになった。
 つまり、映画化はその脚本家や監督や製作会社によって、原作を離れて変わるものだから、そのための脚本を本にまでされることは、原作者が脅かされる。
 だから、裏方である映画の脚本と、本にして表舞台に出すのとでは、意味がまるで異なるのだ。

注 文中の人名について、最初のほうで裁判の当事者として話題に出ているから個人扱いなので名前に敬称を付けたが、そのあとは名前ではあっても屋号とかブランドになるので、敬称は付けなかった。


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by ruhiginoue | 2010-09-10 19:01 | 司法 | Comments(0)