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by ruhiginoue

スティーブン゠キングの荒唐無稽な現実味

 ベトナムの首都ホーチミン出身の11歳の少女は、燃えるものなら何でも燃やすことができると、アジアの各国紙を賑わせているそうだ。 
 彼女は1ヶ月前、家のコンセントの前を通ったら突然電源が燃え始め、それから色々と超能力を発揮して、自身の衣服まで燃やしたりしながら、ついに先日は自宅を全焼させてしまった。
 小児科病院での検査ではなにも異常は見られなかったが、その後両親は、香港の研究者らによる調査を許可した。超自然現象の専門家らは、少女の右脳に変わったものを発見しており、それが原因である可能性もあるという。
 ただし少女の名前は公表されていない。
 燃えたものの写真 http://globalist.org.ua/shorts/97034.html

 これで思い出すのがスチーブン゠キングの小説『ファイアースターター』。軍事研究により念力放火能力を持って生まれた少女が「当局」に追われ逃亡中に両親を殺害される。
 映画化は『炎の少女チャーリー』という邦題で、ジョージ゠C゠スコットやマーチン゠シーンらの名優たちが出演しているが、これはひどい原作改ざんだと批判された。
 映画だと、助けを求める手紙を投函しても届かず、それは当局に雇われた殺し屋が集配の郵便局員を殺害して手紙を奪って握りつぶしたからだが、原作では、当局の者が堂々と自分は政府の役人だと名乗り、直接に郵便局員から手紙をひったくって、その場で開封する。
 これに郵便局員が、裁判所に申立てて発行された礼状はあるのかと詰問すると、そんなものは必要ないと開き直られ、それでは窃盗で刑法違反のうえ通信の秘密を侵害する合衆国憲法違反だと抗議するのだが、それに対しても「政府筋の者」は、文句があったら警察でも裁判所でも議員でも、どこでも訴えればいが、しかし聞く耳持つ者はいないだろうし、仮にいても無力だと勝ち誇ったように言う。
 最後は、映画ではジャーナリズムに訴えようとニューヨークタイムス社を訪ね、ハリウッド映画らしく強引にハッピーエンド。
 しかし原作では、マスメディアに訴えようにも、権力から自由な新聞もテレビも無いという苦悩が語られる。
 これは、80年代に書かれてミリオンセラーとなったSF小説だが、つまりこの当時すでに、超能力ではなく、こうした社会についての描写が、アメリカ人たちから受け入れられる現実感と説得力を持っていたということになる。

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by ruhiginoue | 2012-05-19 13:25 | 文学 | Comments(0)