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by ruhiginoue

ベートーヴェンを聴く夜

 岩波書店が発行している月刊誌「図書」の七月号に、赤川次郎さんが「ベートーヴェンを聴く夜」という一文を書いている。
 彼はミステリー作家としてたいへんな売れっ子であると同時に、クラシック音楽ファンとしても知られている。そして、最近では夜に仕事の休憩としてベートーヴェンを聴くことが最近は多く、「常に高みをめざして努力する、前へ進むエネルギーに『人間の気高さ』を確かめたいからである」というのだが、ここまでならマニアとかファンなら誰でもだいたい気取って書ける。面白いのはその後である。

 「もちろん、音楽が現実を変えるわけではない。ヒトラーだって、フルトベングラーの振るベートーヴェンが大好きだった。
 それでも、私には思い出す光景がある。『格差』を肯定し、労働者を使い捨てできる社会を作りながら、見た目のイメージで高い人気を誇った小泉純一郎首相。クラシックファンを自称していた小泉氏と、私はしばしば同じコンサートに行くことがあって、場内に起こる拍手に笑顔で応じるその姿にうんざりしていた。
 だが、あるとき、客席にいつものように意気揚々と入って来た小泉氏を見て、やれやれと思っていると、場内から拍手の代わりに激しいブーイングが起こったのである。瞬間、小泉氏の顔はこわばって、そのまま席についた。
 そのとき、私は『この国も捨てたもんじゃない』と思った。こういう意思表示をする人がいることは新鮮な驚きであった。
 その夜のコンサートで何を聴いたか、今では全く憶えていない」

 こんな人と同じ趣味なんて嫌だなあ、と思わされることは、よくあることだが、その気持ちについて赤川さんは明確な筆致で解き明かしてくれたのだった。

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by ruhiginoue | 2012-07-14 20:42 | 音楽 | Comments(0)