クラリス姫と浅倉南の「つれていって」
2012年 12月 03日
もともと天邪鬼なので、選挙が近いと政治の話ではないことを書きたくなる。
そこで、今、東京で再放送されている人気アニメ『タッチ』の話の続きを書くことにする。
『タッチ』のヒロインの朝倉南の声優・日高のり子は、これがはまり役だったし、当時は新人で不慣れだったために共演者と裏方から厳しく指導されて力をつけたから、これにより声優の地位を確立した。
彼女の起用は、下手でも可能性に賭けて育成しながら、というものだったらしい。そうでなければ島本須美が起用されていたはずだった。この二人は声の質が似ていて、アニメで同じ役の候補に挙がり、最後は島本須美が選ばれることが度々だったため、日高のり子はオーディションで島本須美がいるのを見ると、またあの人に役を取られる、と思ったそうだ。
この二人は、アニメのヒロインの声優として人気を博したが、その前にはテレビドラマに出演していた。しかし島本須美は女優で、日高のり子はアイドルだったから、そこで演技力に差が出たのだろう。
しかし島本須美は、反対に日高のり子に役を持っていかれたことがあると言っていて、それが『となりのトトロ』のサツキちゃんと、『タッチ』の南ちゃんだったそうだ。どちらも日高のり子の代表作だから、それだけ役に合っていたとも言える。
また、サツキちゃんはとてもしっかりした女の子で、凛々しいほどだから、ナウシカの面影がある少女だと言われたものだ。そしてナウシカを演じた島本須美は、出番が圧倒的に多いサツキちゃんを演じたかったけど、その母親を演じることになる。
そして南ちゃん役は、演技のしっかりした島本須美を堅実に起用するのではなく、新人の日高のり子を起用し、指導の手間はかかるけど初々しさがあって良かったわけだが、このことと共に、演出する側としては自分でスターを育てたかったのではないだろうか。
日高のり子は、杉井ギサブロー監督から、上手にと意識しすぎないよう優しく指導されたと証言しているが、杉井監督としては、宮崎駿監督の作品でスターになった島本須美を避けたのかもしれない。
この当時アニメのヒロイン役の声優としてトップスターだった島本須美は、『ルパン三世カリオストロの城』のクラリス姫の役と、『風の谷のナウシカ』のナウシカ役で、その地位を確立していた。
それを起用すれば話題づくりと興行で有利だが、凡庸な演出家ならともかく、名匠・杉井ギサブロー監督としては、名匠・宮崎駿監督に育てられたスターを起用しないで、自らスターを育てようと考えて当然ではないか。
それは憶測だが、ここで気になるのは島本須美のクラリス姫と日高のり子の南ちゃんが、どちらも同じセリフを言っていて、これが物語で山場となっていることだ。
彼女たちは、主人公の男性に「つれていって」と言うのだ。
まずクラリス姫は、幽閉されていた城から、犯罪者のルパンによって解放されメデタシである。これはディズニーとは逆だ。宮崎監督はディズニー嫌いで「白雪姫なんてアホ娘」とまで言っているが、ディズニーアニメでは白雪姫も眠り姫もシンデレラも、王子様に見初められて結婚し、お城に嫁いでメデタシである。
ディズニーは、権力にすりより戦時中にプロパガンダ映画を作った褒美に提供された土地にディズニーランドを作り、スタジオの労働運動つぶしの陰険さも有名だった。
反対に宮崎監督は、東映動画の労使紛争で組合活動に熱心で、そこで高畑勲監督と意気投合したというのだから、その姿勢は反権力である。
そんな労使紛争になじめず、東映動画を退社してしまったのが杉井ギサブロー監督であり、その後の十年にわたるスナフキンのような放浪生活の後、復帰したのが『タッチ』だった。
そして、南ちゃんの「つれていって」とは、思いを寄せる男性が頑張っている野球で、私を一緒に甲子園に連れて行って、ということであり、男性に身をゆだねるのではなく発奮させる言葉であった。
さらに彼女は、それまでのスポーツドラマのヒロインがマネージャーとして裏方だったのに対し、新体操で頭角を現したため野球部のマネージャーを辞め、自ら大会で受賞するという自立した活躍を見せる。
これに比べたら、ディズニーと逆であっても宮崎作品のヒロインはまだ受動的であり、男性から自立していない。
つまりディズニーとジブリに対して、杉井ギサブロー監督という第三極があるようなもので、これは選挙で言われている第三極より、よほど意味がある。
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そこで、今、東京で再放送されている人気アニメ『タッチ』の話の続きを書くことにする。
『タッチ』のヒロインの朝倉南の声優・日高のり子は、これがはまり役だったし、当時は新人で不慣れだったために共演者と裏方から厳しく指導されて力をつけたから、これにより声優の地位を確立した。
彼女の起用は、下手でも可能性に賭けて育成しながら、というものだったらしい。そうでなければ島本須美が起用されていたはずだった。この二人は声の質が似ていて、アニメで同じ役の候補に挙がり、最後は島本須美が選ばれることが度々だったため、日高のり子はオーディションで島本須美がいるのを見ると、またあの人に役を取られる、と思ったそうだ。
この二人は、アニメのヒロインの声優として人気を博したが、その前にはテレビドラマに出演していた。しかし島本須美は女優で、日高のり子はアイドルだったから、そこで演技力に差が出たのだろう。
しかし島本須美は、反対に日高のり子に役を持っていかれたことがあると言っていて、それが『となりのトトロ』のサツキちゃんと、『タッチ』の南ちゃんだったそうだ。どちらも日高のり子の代表作だから、それだけ役に合っていたとも言える。
また、サツキちゃんはとてもしっかりした女の子で、凛々しいほどだから、ナウシカの面影がある少女だと言われたものだ。そしてナウシカを演じた島本須美は、出番が圧倒的に多いサツキちゃんを演じたかったけど、その母親を演じることになる。
そして南ちゃん役は、演技のしっかりした島本須美を堅実に起用するのではなく、新人の日高のり子を起用し、指導の手間はかかるけど初々しさがあって良かったわけだが、このことと共に、演出する側としては自分でスターを育てたかったのではないだろうか。
日高のり子は、杉井ギサブロー監督から、上手にと意識しすぎないよう優しく指導されたと証言しているが、杉井監督としては、宮崎駿監督の作品でスターになった島本須美を避けたのかもしれない。
この当時アニメのヒロイン役の声優としてトップスターだった島本須美は、『ルパン三世カリオストロの城』のクラリス姫の役と、『風の谷のナウシカ』のナウシカ役で、その地位を確立していた。
それを起用すれば話題づくりと興行で有利だが、凡庸な演出家ならともかく、名匠・杉井ギサブロー監督としては、名匠・宮崎駿監督に育てられたスターを起用しないで、自らスターを育てようと考えて当然ではないか。
それは憶測だが、ここで気になるのは島本須美のクラリス姫と日高のり子の南ちゃんが、どちらも同じセリフを言っていて、これが物語で山場となっていることだ。
彼女たちは、主人公の男性に「つれていって」と言うのだ。
まずクラリス姫は、幽閉されていた城から、犯罪者のルパンによって解放されメデタシである。これはディズニーとは逆だ。宮崎監督はディズニー嫌いで「白雪姫なんてアホ娘」とまで言っているが、ディズニーアニメでは白雪姫も眠り姫もシンデレラも、王子様に見初められて結婚し、お城に嫁いでメデタシである。
ディズニーは、権力にすりより戦時中にプロパガンダ映画を作った褒美に提供された土地にディズニーランドを作り、スタジオの労働運動つぶしの陰険さも有名だった。
反対に宮崎監督は、東映動画の労使紛争で組合活動に熱心で、そこで高畑勲監督と意気投合したというのだから、その姿勢は反権力である。
そんな労使紛争になじめず、東映動画を退社してしまったのが杉井ギサブロー監督であり、その後の十年にわたるスナフキンのような放浪生活の後、復帰したのが『タッチ』だった。
そして、南ちゃんの「つれていって」とは、思いを寄せる男性が頑張っている野球で、私を一緒に甲子園に連れて行って、ということであり、男性に身をゆだねるのではなく発奮させる言葉であった。
さらに彼女は、それまでのスポーツドラマのヒロインがマネージャーとして裏方だったのに対し、新体操で頭角を現したため野球部のマネージャーを辞め、自ら大会で受賞するという自立した活躍を見せる。
これに比べたら、ディズニーと逆であっても宮崎作品のヒロインはまだ受動的であり、男性から自立していない。
つまりディズニーとジブリに対して、杉井ギサブロー監督という第三極があるようなもので、これは選挙で言われている第三極より、よほど意味がある。
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by ruhiginoue
| 2012-12-03 14:30
| 映画