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by ruhiginoue

自衛隊が叛乱の映画 続き

 『亡国のイージス』は、原作だと艦長が叛乱を起すのに、それではイージス艦を撮影させてもらえなかったので、副長が反乱を起して艦長を殺害するというように変えたそうで、自衛隊が叛乱を起こす話だと撮影に協力しないという話を前にした。

 それより昔の70年代にも、絶対に撮影の協力が受けられない映画の最たるものとして『皇帝のいない八月』があり、ここではその中心となる役を渡瀬恒彦が面白がって熱演したため、監督の山本薩夫は、市民を代表して対峙する役の山本圭(監督の甥)が、押され気味になってしまったと著書で述べていた。
 ここで渡瀬恒彦が熱弁をふるうセリフは三島由紀夫の「檄」を真似たような内容で、そういう思想をからかっているのだが、真迫の演技によって狂信者ぶりが凄いことになり、映画を観た当時の荒船官房長官が、こんな異常な自衛官がいてたまるかと怒ってしまい、映画の宣伝に一役買った。
 いたらヤバいという架空の話であるから、大人は判断できる。心配なのは子供で、真に受けてしまうことがあるから、自衛隊が神経質になっているのは政治サスペンスより怪獣映画だ。90年代の映画『ゴジラVSモスラ』で、自衛隊の戦車部隊がゴジラではなくモスラを攻撃してしまい、別所哲也ふんする主人公がやめろと怒鳴り、その小さい娘もやめてと叫ぶのだが、やめない。逃げ遅れた人がいると知った指揮官が、やむを得ずという感じで攻撃中止命令を出す。
 これに怒った子供が防衛庁に電話をかけて「モスラはいい怪獣だからね、攻撃しちゃ駄目だよ」と真面目に言ってくるから、「あれは映画だから本当の話じゃないんだよ」と懸命に説明しなければならず、ほんとうに困ってしまったらしい。それで、善玉の怪獣は攻撃しないという条件で協力するという。

 映画は森林伐採の問題に軽く触れているだけだが、プログラムでは音楽の伊福部昭が「森林は大地が呼吸するための肺も同然なので」と解説していて、映画より面白かった。伊福部昭はもともと農林生物学を専攻していて、箕作秋吉とかボロディンと同様に理科系の作曲家であった。
 そして怪獣が暴れるのは自然の怒りとして音楽も表現していたが、音楽が変わってから、自衛隊の協力を受ける都合もあり、怪獣は「有事」となってしまった。
 これではつまらない。政治的な問題や自然の問題とは別に、子供がどうして怪獣が好きなのかというと、大人より強いからだ。普段、大人から抑圧を受けているからだ。


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Commented by ケーキイーター at 2014-04-12 04:52 x
 自衛隊は協力したんだけど、観ていてつまんなかったのが、アニメの『戦闘妖精雪風』。DVDの最初の二枚を借りて観ただけで、後はやめちゃった。
 ところで、角川書店って妙なところで気骨あるのかな。『悪魔の飽食』をまだ堂々と出版し続けているみたいなので。
Commented by ruhiginoue at 2014-04-12 16:12
 「野生の証明」は、原作の森村誠一や監督の佐藤純弥や脚本の高田宏治の影響が物語には大きく、角川春樹は他の候補者を推薦するスタッフを押しのけて、この子が絶対に良いと薬師丸ひろ子を選んで実際に成功したのが功績ですが、「悪魔の飽食」については、こちらのコラムに書いていますのでぜひ読んでください。
http://t.co/AW4jNwxK3o
Commented by ケーキイーター at 2014-04-16 23:50 x
読ウェブ感想文。「読んでから見るか、見てから読むか」は、今では日本中の映画&テレビ界と出版社との(まんがも含めて)間では「当たり前」の商売ルールになってしまっていると思っています。2006年のジブリによる『ゲド戦記』の映画化がきっかけで、アーシュラ・ルグインさんのファンになってしまった私がいるのよね。
Commented by ruhiginoue at 2014-04-17 22:16
 もとは「ジョーズ」で、映画のポスターと本のカバーとレコードのジャケットを統一して三位一体の宣伝で大ヒットでしたが、今は主流になってしまい、テレビ放送を前提に作るから刺激がなくなってつまらない映画ばかりになりました。
 ルグインは下馬評どおりノーベル賞をとるでしょうか。
Commented by ケーキイーター at 2014-04-17 22:32 x
「武器を捨てて書を読みま」賞を欲しがっているお婆ちゃんというイメージ。『西のはての年代記』全三冊はそんなはお話。文庫化されているよ。
Commented by ケーキイーター at 2014-04-18 02:40 x
『ジョーズ』って、宣伝も上手だったんですね。
(夜中に目が覚めちゃった。)
Commented by ruhiginoue at 2014-04-18 12:27
 当時は「商売ジョーズ」と言われて、サメが両顎(英語でジョーズ)から牙を向いて泳ぐ女性に向っていくポスターの女性を札束にすげ替えたパロディがありました。
Commented by ケーキイーター at 2014-04-19 23:31 x
ルグインさんの本よりも、彼女のお母さんのシオドーラ・クローバーの著書の『イシ』に凄い感銘を受けた。岩波文庫の方。『悪魔の飽食』のアメリカ版のうちの一つ。アメリカの歴史の闇のうちの一つ。
Commented by ruhiginoue at 2014-04-20 00:07
 まだ読んでないので、今度買います。
by ruhiginoue | 2014-04-11 22:47 | 映画 | Comments(9)