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by ruhiginoue

『銀河英雄伝説』と『怒りの神』

 アニメ化でも人気がある田中芳樹のSF小説『銀河英雄伝説』で、軍人でありながら民主主義の擁護者たらんとする我らがヤン゠ウェンリーが、軍法会議で査問にかけられる。
 「人間なしに国家は存続しませんが、国家なしでも人間は生存できます」
 「君は無政府主義者だったのか」
 「いいえ、私は何主義者でもなく、強いて言えば菜食主義者です。ただし美味しそうな肉料理をみるとすぐに戒律を破ります」
 「ふざけるな」
 また他の場面では、
 「しょせん国家なんてものは道具にすぎない。これを忘れなければ正気を保っていられる」
 と、作者の見識を代弁する。
 
 こうした「銀英伝」の含蓄に共感する人がいる一方で、そんなのは物語ではなく御託だと批判する人たちもいる。あくまで作者の目的は、辛辣な自説を述べながら惚けてみせる人物を描くことではあるが。

 ところがアメリカSFニューウエーブのデックとゼラズニイの共著『怒りの神』では、狂信的な官僚が、
 「国家の機能は一定の生存者がなければ維持されないというのは嘘だ。マイクロ化されたデータのカプセルが安全に貯蔵されていれば愛国的思考形態は残っていく」
 演説で彼はそう主張した。そして人工衛星から無差別爆弾=怒りの神を爆発させ、世界を破滅させたのだった。
 そのうえ、文明の崩壊した世界で生き残った人たちは、そのように世界を変えてしまった狂信的官僚を、今のこの世界を作った創造主であるとし、神と崇めていた。

 この、まさにぶっ飛んだ発想に及ぶ小説はとても少ない。そもそも、人は教訓を得るために小説を読むのではない。現実を越える驚嘆と、現実以上の現実感を求めて読む。それがないから日本文学はSFに限らず物足りないのだ。

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 『怒りの神』もう売ってないサンリオ文庫邦訳を読みたい方には、大切に扱うとお約束いただければ、お貸しします。

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by ruhiginoue | 2014-04-21 00:03 | 文学