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by ruhiginoue

高倉健と「野生の証明」と薬師丸ひろ子

 高倉健が亡くなった。名優なので新聞が号外を配布していて、もらった人たちは熱心に読んでいた。その場面を新聞社のカメラマンが撮影していて、これも記事にするというわけだ。「なるほど」と思った。

 たまたま通りかかって、その号外をもらった。こういうことは稀な偶然だ。それでネットオークションでは、コレクター向けに売りに出している人たちがいた。500円なんていう値段がつけられていて驚いた。

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 その訃報の号外は保存しておく。ずっと保管してきた「野生の証明」のプログラムと一緒に。

 ところで、50歳になった薬師丸ひろ子がNHKドラマ出演がきっかけで紅白歌合戦に初出場し、ヒットした主題歌を唄うそうだが、その直前に高倉健が死去とは何というべきか、高倉健の主演作「野生の証明」は、薬師丸ひろ子のデビュー作である。

 この映画のプロラムで高倉健は「この映画は、ひろ子ちゃんに食われてしまいそう」とコメントしていた。確かに、ポスターでは前に薬師丸ひろ子のアップを配し、その後に高倉健がいて、顔がはっきり見えないという図式になっている。

 この「野生の証明」は、防衛医大と訴訟をしている時に気合いを入れるためビデオで繰り返し観たが、それより前に、ガキのころに観た時と、それから何年か経過してから観た時と、成人してから観た時とでは、理解の深度が違うので面白く、テレビで放送される度に、映画館の大画面に比して迫力に欠けるにもかかわらず繰り返し観た。

 まず、「野生の証明」の冒頭は自衛隊の特殊部隊が訓練している場面だが、ここで気合いを入れるため「レンジャー!」と絶叫している。後に元空挺隊員の自衛官に訊いたら実際にそう咆哮するそうだ。そしてこの直後に何とこの元隊員はイラクで捕まって危ういところだった。

 この「レンジャー訓練」は地獄の特訓で、やり遂げた隊員は隊内で一目置かれるそうだ。そんな隊員が、隊内でいじめ自殺という事件があった。だから、いじめなんて部活で心身を鍛えれば良いとか言う単純な人がいるけれど迷信だ。

 また、「野生の証明」は特殊部隊を去った主人公が造反して暴れるので「ランボー」の先駆けのようだったが、信濃川河川敷のような開発利権不正に邪魔者暗殺の手口とそれを進める地元有力者の近親相姦はアメリカ映画「チャイナタウン」からの剽窃だったし、最後のほうで高倉健がトロッコに乗って逃亡するのは「網走番外地」と同じであった。

 色々な映画を観て元ネタに気づくというだけでなく、最初は理解できなかった社会的な背景も観る度に解るようになった。

 アヴァンタイトルに続いて、過激派が主人公の特殊部隊に退治される場面となるが、ここでアメリカ大使の私邸を占拠して総理に会わせろと要求する過激派(寺田農)が、「アメリカ帝国主義の走狗に成り下がった日本政府に対しーっ、我々はぁーっ、プロレタリア人民の名においてぇーっ」と紋切り型を自己陶酔しながら喚いている様子は、日本の左翼の薄っぺらさをからかっている。

 地元の有力者(三国連太郎)が息子(舘ひろし)を「自衛隊に」と言われて、困ったように「いや、男の子は一人だけなので」と言い、自衛隊の司令官(丹波哲郎)から「唯一の泣き所というわけですか」と遠回しに皮肉られる。自衛隊には跡取りになれない次男坊や三男坊が多く、跡取り息子が一人しかいないということの裏に、それがバカ息子という意味がこもっている。

 防衛庁が「省」に昇格しようとしている時に自衛隊の不祥事が表沙汰になってはいけないと心配している場面もあり、これは実際に不祥事を隠しながら昇格してしまったし、あと、基地の近くにあってよく隊員たちが飲みに行くバーで、主人公(高倉健)が退職したという話を訊いて店員(田中邦衛)が「自衛隊を辞めるなんて馬鹿だなあ。衣食住がタダなうえ給料がもらえて、戦争が無いから死なないだろ」と真面目に言うが、これはどうもそうではなくなってきた現実がある。イラクで死傷した隊員たちのことは隠蔽されていて、大手マスコミはなかなか取り上げずフリーランスの記者が主に告発している。

 というわけで、色々と思う所があるのだった。

 78年公開の映画「野生の証明」のプログラムから、当時13歳の薬師丸ひろ子。
 映画では高倉健ふんする主人公の養女を演じる子役だったが、活劇が見たいからという単純な動機で映画館に行ったガキにとっては、少年の心をときめかせるお姉さんという感じだった。 
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つづき薬師丸ひろ子だからよかった『野生の証明』と『セーラー服と機関銃』


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Commented by ケーキイーター at 2014-12-04 13:33 x
 私は『野生の証明』を全然観たことないんですが。その、「自衛隊に入るのに跡取り息子がどーのこーの」というところを読んで、やはり一般の人から見たら徴兵制は嫌がられるな、とつくづく思わされました。万葉集に「防人の歌」が載るくらいだしね。
 「万葉集」という言葉でピンと来たんだけど、歌手としての薬師丸ひろ子は好き。彼女の出演した映画はあまり観たことが無いな。健さんの映画もあまり観てない。自分でちょっとさみしい自分だな。


Commented by ケーキイーター at 2014-12-04 14:42 x
 訂正。私は薬師丸さんのアルバムタイトルを『万葉集』だと思っていたが、『古今集』の間違いだった。

Commented by ruhiginoue at 2014-12-06 01:05
「万葉集」の「防人の詩」は、「二百三高地」の、さだまさし、ですね。
こちらは脚本が笠原和夫で、その指名で「仁義なき戦い」の後継となったのが、「野生の証明」の脚本を書いた高田宏治でした。
薬師丸ひろ子の「古今集」は、発表当時なかなか好評でしたね。
Commented by 次郎くん at 2014-12-07 13:04 x
主宰者様のネット上梓された記事を読むのが日課の一つです。配信記事が滞っていると、癒し系としての機能記事が一つ欠けたので、そういう時は一抹の寂しさを感じます。
Commented by ruhiginoue at 2014-12-07 22:27
 そういう方がいらっしゃると嬉しいので、また書き続けます。
 
Commented by ドナルド at 2014-12-13 05:40 x
なるほど・・・。

何十年か前に見たのが最後です。当時は意味の分からない場面があった。結末の凄さだけは覚えています。

これはもう一回、見ないといけませんな。
Commented by ruhiginoue at 2014-12-13 22:51
原作と違う結末には、聞いてはいたけど驚きましたね。
by ruhiginoue | 2014-11-28 00:01 | 映画 | Comments(7)