コメントの他に、表示されている著書をクリックしてその感想をアマゾンのレビューに投稿してくださることも歓迎です。おたよりはこちらへruhiginoue@excite.co.jp


by ruhiginoue

「アナと雪の女王」のほうが「風立ちぬ」より面白かったわけ

 昨年は新宿ミラノ座の最後で終わってしまったので、人気だった作品をふりかえる話から今年は始めよう。

 印象的だったのがディズニー製作アニメーション映画のヒット作「アナと雪の女王」だった。

 ディズニーのアニメでは、白雪姫も眠り姫もシンデレラも、王子様に見初められて結婚し、お城に嫁いでメデタシである。
 ところが宮崎駿監督の映画だと、ナウシカ姫も、もののけ姫も、自然と格闘するように生きている。デビュー作のクラリス姫は、幽閉されていた城から、権力に追われる犯罪者ルパン三世によって解放されメデタシである。

 ディズニーは常に権力にすりより、戦時中にプロパガンダ映画を作った(ここで日本もさんざん悪く描かれた)褒美として提供された土地にディズニーランドを作ったし、スタジオの労働運動つぶしの陰険さも有名だった。

 反対に宮崎駿は、東映動画の労使紛争で組合活動に熱心だったし、そこで高畑勲と意気投合したというのだから、その姿勢は反権力である。

 後にスタジオジブリを創立するこの二人は、二十代のとき一緒に「太陽の王子ホルスの大冒険」を作るが、ここではアイヌの集落をモデルにした村を襲う氷の悪魔との戦いを描いていて、宮崎駿が最も好きな作品という「雪の女王」を意識している。
 
 「雪の女王」は、ソ連映画の絶頂期の作品なので今観ても驚嘆する技術だ。またスターリン政権下での急速で強引な近代化により人情味が失われた社会を風刺している。それらが「ホルス」に影響している。
 
 ところで「アナと雪の女王」は、アンデルセンの童話を意識はしているが、ほとんどオリジナルの物語であり、「雪の女王」と付くのも邦題だけだ。原題は「凍れる者」とでも訳すれば意味が近いだろう。

 この映画には、また王子様が出て来るが、これはヒロインにとって運命の人ではなく、実は庶民の男性がそうだった。ここが過去のディズニー作品とは違う。もっとも、王子はもともと王位継承順位が低すぎたから不純なことを考えたのだったが。
 
 また、アクションをちりばめたり緩急を付けながらクライマックスにもっていく作劇はハリウッドの相変わらずのパターンである。
 ただ、もともと力作ではあるし、世界各地に輸出され売れてもいたが、特に日本で大受けし大ヒットとなったのは、日本語吹き替え版の異様なほどのテンションの高さによるものだ。

 この「アナと雪の女王」に比べると、宮崎駿監督最後の長編という「風立ちぬ」はテンションが低い。同監督の映画としては例外的に「・・・の」という題名ではなく、これは堀辰雄の作品から取ったと明示されている。同じくオマージュを捧げた題名には松田聖子のヒット曲「風たちぬ」がある。

 「アナと雪の女王」に比べて「風立ちぬ」が生彩を欠いていた一番の原因は、主演の声優だろう。神田沙也加の「これで親の七光り返上」と褒めそやされた好演に対し、庵野秀明のド素人ぶりはひど過ぎた。


人気ブログランキングへ1日1クリック投票をお願いします
[PR]
Commented by 倉野 明人(旧HN:小野 哲) at 2015-01-01 14:45 x
 お久しぶりです。
 「アナと雪の女王」ですか…。私は見ていませんし、最近の映画で見たいものはそれほどありませんね。何しろ、「聲の形」のような障がい者へのいじめを堂々と金儲けにする講談社など、目を覆いたくなる有り様です。
 ポストコロニアルという思想で「風立ちぬ」や「永遠の0」を見ると、違和感を強く覚えますね。

 多忙ですが、たまにコメントに訪れます。
 今年もよろしくお願い申し上げます。
Commented by ruhiginoue at 2015-01-01 17:36
新たしき 年の始めの 初春の 今日降る雪の いや重け吉事 大伴家持

晴れたのは短い時間でした。

今年も、またコメントをお寄せください。
Commented by ケーキイーター at 2015-01-01 20:54 x
 確かに『アナと雪の女王』はおもしろかったです。で、『風立ちぬ』の庵野さんの演技に関して言えば、一般の上手な役者さんが演じていたら、あの映画は「戦争の道具を作った人の偉人伝」に見えてしまうかもしれません。だからあれで良かったんじゃないかな、と思っているんだけど。メイキング映像までしっかり観ていたので(映画『夢と狂気の王国』とか、NHKでやっていた『プロフェッショナル』とか…)、何となく納得がいくんだけど。鈴木さんや宮崎監督が「あんの…」と呟くシーンがあるのよね。そもそもあの映画で描かれていた堀越二郎、実在していた人物だけど、映画は「ある程度かなりフィクション」だから。私はそういう風に捉えていましたが。


Commented by ruhiginoue at 2015-01-02 16:16
素人を使ってわざと下手に演じさせたのは、糸井重里や立花隆の起用が前例にあるけど、「風立ちぬ」は逆効果でした。
Commented by 次郎くん at 2015-01-03 10:46 x
玄人を使って究極を目指して失敗した例もありますよ。松田聖子よりも全分野に於いて格上の存在だったヒロコグレースは全然日本人には受けませんでした。もちろん過去に華夷秩序の範囲内にあった国々でもです。欧米人の評論家から高評価された存在が、漢字文化圏だった地域で売れるとは限りません。
Commented by 次郎くん at 2015-01-03 10:54 x
そういえば、小澤監督の信者と松田聖子の信者って似てませんか。特に松田聖子の信者は、欧米進出には失敗したのに、中国と東南アジア諸国では国民的ヒットをとばしたというだけと、当時の鄧小平主席から「孫がファンなんだよ、頑張ってね」とお褒めの言葉をかけていただいた程度で「国際的セレブ」と強弁しますから。ああ、この投稿は主宰者様への皮肉ではありませんので誤解なきようにお願い申し上げます。他人様とのつきあいで、相手を気分悪くさせる内容ならば真実でも語ってはいけないとブッダやヴェーダーンタの教えにもありますから。
Commented at 2015-01-03 14:57 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ケーキイーター at 2015-01-03 17:04 x
 やっぱりジブリも世代交代? で、いいんじゃないかな。軌道に乗るには時間もお金もかかるかもしれないけど。

Commented by ruhiginoue at 2015-01-04 13:54
♪「雪だるま作ろう」とはなりませんでした。雪は少しだったので。ニンジンは料理に使いました。

「ヒロコ」って別の人のことでは?

ジブリも息子が頑張っているようだけど、今後はどうなるでしょうか。
Commented by ケーキイーター at 2015-01-04 14:53 x
 ジブリは誰がどーんと芽を出すかが解らないので、余計楽しみなのさ。吾朗さんが今手掛けている番組がNHKのBSだけなので、今は観れなくて私ゃむくれている。(顔文字を使ってみようかと思ったが、やめた。)ぶすーっ。

by ruhiginoue | 2015-01-01 13:01 | 映画 | Comments(10)