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by ruhiginoue

『美味しんぼ』を誤解してる人ばかり

 人気漫画『美味しんぼ』について、まだ誤解したままでいる人たちが少なくないようだ。こういう人たちが誤解しているのは原発とか福島とかではなく漫画を誤解している。
 
 まず、『美味しんぼ』の福島編にでてくる鼻血話について、後から作者が述べた見解は、色々と騒ぎになったことを受けて色々と言っていることのなので、漫画が描いた物語を解説したものではない。
 
 また、あの物語が描いているのは、主人公の新聞記者が福島に取材しに行って、そこで原発事故の後に不自然な鼻血が出て不安になったと言う人たちを実話に基づいて取り上げたうえ、主人公も鼻血が出たため妻から心配され、取材のため長期滞在していたことが影響したのではないかと不安がる、というものだ。
 
 この鼻血については諸説あり、自信たっぷりに言う人もいるが、どれも明確に断定できない。だから不安になる。不安にさいなまされることも、事故で受けた被害の一つである。仮に、後から絶対確実に心配ないと証明された(それは不可能だろうが)としても、それまでに抱いた不安によって悪化した生活の質は、取り戻せない。

 そこで本末転倒し、不安を煽るなと言う。しかし不安があるから、安心したくなり、そこで実際どうなのか知ろうとする。そして、これはそもそも原発事故がなければ必要がなかったことだ。その結果がどうであれ、しなくてもよい心配を強いられたのだ。その分、ほんらい出来たはずの他のことに妨げとなった。
 つまり、あくまでも責められるべきは事故を起こした連中であって、それによる不安を漫画に取り上げた人ではない。

 だいたい、劇中に描かれた経過は結論ではない、ということを知らないか、忘れている人たちがいるから、変なことになる。
 例えば、小林よしのりとか山野車輪とかは評論のためにストーリー性がない漫画を描いており、こういうものなら描かれていることが結論や主張となっているけれど、『美味しんぼ』はルポルタージュのような内容ではあるが、描く形式はあくまで物語であるから、その劇中に現れる物事は作者の主張や結論ではない。
 そして『美味しんぼ』の話の続きでは、主人公は福島について書いた記事を批判されたり、父親に叱られたり、という展開になる。

 なのに、物語に描かれることはすべて作者の主張であるとか、経緯にすぎないことを結論だと早とちりしてしまう人がいる、ということだ。
 こういうことは、政治的な人の特徴だ。この良い例が、差別を描いた小説や映画に対して、しばしば差別反対運動をしている人たちが行う非難だ。差別を受けて悲しんでいる人の描写に対して「理不尽な差別に抗議もせずメソメソしているようにするとはケシカラン。これは差別だ」と言う。
 しかし、その後の物語展開は、最初は差別を受け悲しんでいるだけの人が、その理不尽さに気づいたり、啓蒙されたり、仲間が出来たり、ということにより変わって行く。だから差別を批判する話なのに、途中で文句を言って差別だと喚くのだ。

 こういうと、また勘違いする人がいて、なら『美味しんぼ』は原発事故の影響を否定する話なのかと言い出したりするだろうが、それも違う。登場する人たちの営みや、考える過程を描くことによって、人間の本質に迫るのが物語である、という意味だ。

 そして、こうした物語という一種の芸術表現を理解しない政治的な人たちには、左よりな人たちが少なくない。娯楽や芸術まで政治的主張の道具だと思っているので、他の人たちの作品までそうであると錯覚するのだ。
 この具体例としては、先に上げた差別問題だと解放同盟の急進派の朝田善之助という人が今さら言うまでもなく有名だったし、中国では毛沢東の奥さんの江青が、もと女優なので映画等に口出しをして、その内容が上記と同じ調子だったから中国映画界は大迷惑だった。

 こういうことだから、『美味しんぼ』の作者が物語とは別に色々とマスコミ向けに言っていることはともかく、漫画を非難している人たちのうち、政府や業界の方面は原発の問題をとりあげて欲しくないということだろうが、これとは違う左よりの人たちは、そもそも物語というものをわかっていないのだ。


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Commented by そらこ at 2015-04-01 00:21 x
その物語という文化に幾度も勇気付けられた私がいます、オーナー様にもです( ^ω^ )

パズルのような文に楽しませていただいたり。

凡ゆるものごとが俯瞰される世界になりますように。
Commented by ruhiginoue at 2015-04-01 12:53
 物語の場面転換と、文の接続詞は、肝心で難しいものです。
by ruhiginoue | 2015-03-30 13:23 | 社会 | Comments(2)