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by ruhiginoue

裁判に録音を証拠として提出する場合の問題

 講演会の録音を「テープ起こし」して雑誌の記事にする仕事をよくやっているけれども、これは医療裁判でやった経験から慣れているためだ。文章と違い喋っている言葉を文字にするのは、発音と語彙と趣旨の読み取りが大変な面倒くさい作業である。

 なのに、よく、「証拠がある」と言い録音そのものを持ってくる依頼人がいるから、弁護士が困る。手間ひまのかかる作業を多忙な弁護士はやってられないし、できる事務員を法律事務所が雇っていればいいが、そうでなければ依頼人が自分でやるしかない。
 また、自分でできない人は、その家族も大体できないことが多い。外の誰かに依頼するにしても、事情を理解しているうえに予備知識があるのでないと、正確に聴き取り争点を明確にする文章として構成することは難しい。
 だから、当人ができなければ、その家族も大体できないという傾向となるのだ。めんどくさい作業をコツコツとできる性格か、語彙や作文の能力がそれなりか、ということは家族で共通していることが多いからだ。

 ところでこの「テープ起こし」という表現は、今では録音テープがほとんど使われていないが昔からの慣習で言われている。今主流のICレコーダーは小型なうえ録音時間が長く回転モーターの音がしないので、隠し録りしやすくて便利だ。テープが廃れるわけだ。
 しかし、気付かれたり身体検査されたりで取り上げられてしまうこともある。だから念のため携帯電話を通話状態にして通話相手に録音してもらったりする。

 昔のサスペンスやミステリーでは、写真を撮るとカメラがそのデータを直後に電波で転送すると言うものが出てきたものだ。これはスパイが捕まったりした場合の備えであり、早く情報を届けられるようにするためでもある。
 それが今は携帯電話やスマホでもできてしまう。

 そのあとは、裁判で録音を証拠として出す場合の問題がある。録音は誘導で言わされた場合がある。例えば、オウム真理教に殺されたことで知られる坂本弁護士は、労働争議で証拠の録音を分析し、挑発してやらせた陰謀を暴いた実績があったし、あのマルコムX の娘がFBIの巧みな誘導にひっかけられた時は、キング牧師の未亡人が助けた。夫がFBIに散々やられていたので敵の手口をわかっていたからだ。

 自分の防衛大の裁判の場合、最初は、防衛医大の助教授(今の准教授)が患者に対し驕った口をきいていたので頭にきたから、それを録音しておき法廷で暴露したのだが、後から弁護士が、テープ起こしを見て、問題になった手術をその助教授が、自分ではやらないし執刀医のしたことを理解できないと言っていることに着目した。
 そして、上司ですら理解できないものを、患者に丁寧に説明し納得の上で手術同意書をとったなんてあり得ない、執刀医が言っていることは明らかに虚偽である、と突いた。
 ただし、実際には、こんな単純な話ではなく、そこまでに至るまで、非常な手間と調査と根気が必要だった。

 そして、あの手この手を使いはしたが偶発的な材料もあった。その防衛大の助教授が、録音は誘導尋問だと逃げることも予想して対応策を練っていたが、その前に助教授が証言したくないと言い始め、おかしいじゃないかという話になった。実は学会で東大の教授に「あの手術は何だ」と言われヤバイと思い逃げたのだった。

 あと、これは債権回収業者がよくやることだけども、盗み録りだと、本意な発言じゃなかったとか別の意味で言ったとか色々と弁解されてしまうので、あらかじめ、こういう話だから録音をせてもらいますと宣言しておくことだ。

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by ruhiginoue | 2015-09-11 11:24 | 司法 | Comments(0)