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by ruhiginoue

『かぐや姫の物語』は素晴らしい

 高畑勲監督の『かぐや姫の物語』は、監督の年齢からすると最後の映画になりそうだということで、監督自身もたいへんな意気込みであったし、スタジオジブリもそんな創設者のためだから採算度外視で製作すると発表していた。
 このため大変な力作となっていて、練りに練られた構想と丁寧な仕上げが観て感じ取れる。高畑勲監督のアニメーション映画の中で、最も良く出来ていて見ごたえがあると言ってもいいだろうし、また、これまでいろいろとあった『竹取物語』の映画で最高だと言うこともできるのではないか。
 少なくとも、沢口靖子のかぐや姫より遥かに傑作だ。もちろん市川崑監督の下で丁寧に作られていて、衣装もセットもしっかりしている。しかし下手なSF解釈と下手な特撮が興覚めだったし、何より訴えかけるものが無かった。
 
 これは監督の責任ではないが、沢口靖子のかぐや姫はテレビでの宣伝のため化粧品会社とタイアップしていたから、顔がまるで現代風のメーキャップなうえ、眉毛をそのままにして額に墨を入れているから滑稽であった。

 これが高畑勲監督のアニメでは、眉毛を抜くのを嫌がるかぐや姫が「汗が目に入る」と言うのに対し、作法係の女性は「高貴な女性は汗をかくことをしない」と言う。
 かぐや姫は、都に来て屋敷に住み綺麗な着物をまとって面白がっていたが、そういう上流階級の生活につきまとう嘘臭さを感じるようになり、それに比べると小さいころに竹藪近くの野山を駆け回っていた生活のほうが本物ではないかと思い巡らせる。そのさいの夢か幻想か不明な非現実というか超現実というかの描写をアニメならではの技法を駆使して表現している。
 
 また、市川崑監督の『竹取物語』は、製作が東宝特撮と同じなので仕方ないとしても、それでこじつけ無理してばかりいるので物語が破綻している。
 最後の月からの迎えが『未知との遭遇』などハリウッド製SF映画の亜流になっているのも失笑だったし、龍を討ちに船で出撃したら大嵐という場面でも、それを特撮で描いて見せては、そんなもの実在しないものだという話と辻褄が合わない。
 それに対し、高畑勲監督のほうはアニメならではの表現により、欲ボケした男の妄想と恐怖としていて見事だった。

 このように、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』は、技巧と訴えかけとの融合が成功していた。これは良かった。話のテンポもよくて何度くりかえし観ても飽きない。これはほんとうに良かった。


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Commented by ケーキイーター at 2016-04-23 21:56 x
 私も高畑監督のこの映画は、めちゃ好きです。後世に残したい一本。
 それから、月からの迎えが来たところの音楽がグー。「ワールドミュージックって便利な言葉なのかな」とも思った。
 あ。もう一つ。劇場公開が、夏から秋に延びたのも、ラッキーだった。と断言しちゃおう。真夏にだったら、『風立ちぬ』にお客さんを取られて、「映画館で観て良かった」と言ってくれる人が減っていたんじゃなかったかな。
Commented by ruhiginoue at 2016-04-25 14:17
仏教ふうのお迎えがよかったのに対して沢口靖子を迎えにくる空飛ぶ円盤はだめでした。
Commented by ケーキイーター at 2016-05-03 16:03 x
 高畑監督は最初『平家物語』を映像化したいと考えていたが、一緒に絵コンテを描く相棒のスタッフが「人が人を殺すシーンを描きたくない」と言った。それで『竹取物語』をやろうとした。ということらしいです。その前に氏家さんの「鶴の一声」があったり。私の本棚に参考資料があるかもしれない。ええい、調べ直すのがめんどくさい~。

Commented by ruhiginoue at 2016-05-03 20:26
そんな製作裏話があるのですか。
逆にというか、溝口健二監督は「忠臣蔵」で人を殺す場面にリアリティを持たせるには本当に人を殺さないと駄目だということで、なんと討ち入りの場面を省略してしまったというすごいことがありました。
庵野秀明監督によると、宮崎駿監督のヒロインでナウシカだけが殺人をしていて、それで苦悩するわけですが、そのうちルパンにも人を殺させたくないと言い出したとか。
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by ruhiginoue | 2016-04-23 17:15 | 映画 | Comments(4)