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by ruhiginoue

蜷川幸雄の罵声と死

 演出家の蜷川幸雄が死去したさい、テレビで彼の「熱血指導」の映像がくりかえし流されてた。そうした彼の姿は昔からテレビで何度も紹介されていて有名だ。演出するさい怒鳴ったり罵声を浴びせたりで、汚い言葉も連発される。
 こんなやり方をしなくても上手に演技をつけたり指導したりできる演出家はいくらでもいるのだが、それでも死んだ有名人ということで美化されてしまうのではないか。立場の弱い者を威嚇して従わせるのではパワハラと同じだ。

 しかし、蜷川幸雄という人はカメラを意識して演じていた部分もあっただろうし、あの暴力的な態度に「世話になった」という役者もいる。
 蜷川幸雄は自らが演じる側になることがあり、もっぱら演出家とかテレビのディレクターとか地で演じるような役だったが、それで演出している姿も意識してやっていたような印象だったし、また彼が演出家役で出演していた映画『Wの悲劇』(原作者の夏樹静子が先日亡くなったが、かなり違う脚色がされていた)では、演劇の世界の封建的な体質も描かれていた。
 そして、これは昔から言われていることだが、演劇をやるには、そのさい下積みとか付き人とかで、マゾっ気のある人でないと務まらないと言われてきた。

 つまり、蜷川幸雄はわざとあのような態度をとっていて、それが良くて付いて行った人たちがいたということではないか。
 それでも、蜷川幸雄に対して対等の人間として「あなたのそのやり方は間違っている」と指摘する演劇人がいても良かったはずだ。しかし日本にはいなかったということか。
 
 ただしアメリカでも、アメリカで一番の演技派俳優と称されていたヘンリー フォンダは、主演作『怒りの葡萄』『荒野の決闘』『ミスターロバーツ』の監督ジョン フォードと対立したさい「これまでのあなたのやり方は間違っている」と言ったので喧嘩になり、激高したジョン フォードがヘンリー フォンダを殴ってしまい決別した。
 一方、低予算だったのでスターを主役に据えられなかったことがきっかけで『駅馬車』に主演してから何度もジョン フォード監督作品に主演したジョン ウェインは、演技がヘタクソだったので監督から怒鳴られ罵倒されてばかりいたが、それに付いていくしかないと我慢していた。

 だから、日本の演劇にも大根役者が多いということだったのだろう。


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Commented at 2016-05-24 17:08 x
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Commented by 石畳 at 2016-05-24 21:51 x
>あの暴力的な態度に「世話になった」という役者もいる。

まさに「虐待のなかに、自分の満足を見出す日本的マゾヒズム」(『日本人の心理』南 博 著 岩波新書)そのものではないだろうか。演劇界に限らず、学校や職場等、日本社会のあらゆる面で見られる事象である。それが「弱者」の「泣く子と地頭には勝てぬ」的な諦念からくる「強者」への「媚び」であり、自己の屈従的態度の「合理化」であることは明らかであろう。

「軍隊の鉄拳は、もう言うだけ野暮である。それが工場でも行われているー日本は暴力の世界だ」
(清沢洌『暗黒日記』昭和20年1月14日)
Commented by ruhiginoue at 2016-05-25 12:02
映画評論家の佐藤忠男も、日本映画では外国映画に比して強者に媚びて倒錯した快感を得る描写がめだち「マゾヒズム文化」が存在すると指摘してました。
Commented at 2016-05-25 15:14 x
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Commented by ケーキイーター at 2016-05-26 19:32 x
 「何で自分はアニメ見ることが多いのかな」って疑問の答がこれなのかもしれない。
 で、大根と言えば…今日の晩御飯のおかずに、切り干し大根を煮た。
Commented at 2016-05-26 20:43 x
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Commented by ruhiginoue at 2016-05-27 19:20
ただ、アニメはアニメで低賃金労働が問題になっていて、粗製濫造の作品が安いから買われて、安易な見せ場として暴力が多いから批判が昔から強いのに、世界で受けている日本の誇るべき文化だとか世界中が親日とか、ネトウヨ雑誌サピオから朝日新聞のwebRONZAに連載する元朝日記者の川上泰徳までが戯言を吐いてますが。
Commented by ケーキイーター at 2016-05-27 20:15 x
 昔、アニメージュに掲載されていた座談会を読んでいて、「恩地監督って日本のアニメーション制作現場のことをほとんど理解できなかったのかな」と深く考えさせられたことがあります。ずいぶん昔に読んだ文章なのに、今でも大体の内容を覚えている。繰り返して読んだせいもあったでしょうが、それだけ印象にのこっているのは、その話の内容が強烈だったのかな。決して暴言を吐いていたわけではなかったんですが。

Commented at 2016-05-28 15:24 x
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Commented by ruhiginoue at 2016-05-28 17:29
『地球へ…』が例外的なアニメ作品の恩地日出夫監督ですか?
Commented by ケーキイーター at 2016-05-28 22:08 x
 そうだね。その恩地監督さんのこと。それから、私が日本の実写のドラマや映画を苦手とする理由。全部ではないけど、「アニメ以上にリアリズムに欠けている。不自然な脚本や演出が多い」と思っている。で、「SP・野望篇」はその最たる例なのかな。これに懲りずに「革命篇」も映画館へ観に行ったら、こっちの方はなかなか面白かったです。但し、最後でV6の歌が流れたので、こっちはぶち壊し。大抵、映画を観終わった後で現実の世界に戻るのは映画館を出た後なんだけど、この歌のせいで、館内にいるのに現実世界に戻されちゃった、という訳。難しいねえ。
 切り干し大根の煮物はまだある程度、私の冷蔵庫の中に残っている。早めに食べきった方がいいんだろうな。
Commented by ruhiginoue at 2016-05-29 16:14
タイアップで内容と合わない歌が多くなって久しいけど、なんとかならないものですかね。

大根役者の語源は当たらないということですが、胃腸に良いから毎日食べて健康と言っている知り合いの80歳代の男性が言っていました。
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by ruhiginoue | 2016-05-23 17:41 | 芸能 | Comments(12)