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by ruhiginoue

江川達也の発言が誤解されている

 漫画家の江川達也が、ヒットしている映画『君の名は。』を、受けるのは解るがプロから見ると軽くて面白くないとテレビで発言したことにより誤解されている。
 この発言のため、最近はヒット作が無いくせにと非難する人たちがいて、それとともに江川氏が最近ではタレントの真似ばかりしていて本業の漫画が劣化しているという指摘もされた。

 たしかに江川氏は『タモリ倶楽部』などテレビ出演してコメントでウケをとっているが、その一方では、漫画の連載が好評でも中途半端でやめてしまったことが何度かあり、また、見るからに絵が手抜きっぽくなっているとして評判がよくない。
 このため、晩年の赤塚不二夫のようになっているのではないかと疑われているわけだ。

 そして、かつて江川氏は自作の漫画が実写とアニメの両方で映画化テレビ化してヒットしていたのに、最近ではそれがなく、それでいてヒット作にケチをつけているから、自分でヒット作ができないくせにと言われたり、その作品を知らない人からは、テレビでコメントしている江川氏とは何のプロなのかと皮肉ではなく本気で言われたりするわけだ。

 しかし、それは関係がないことだ。あくまで江川氏は、『君の名は。』がヒットしていることに理解はできるが、それはウケるように考えて作られているからで、そのことが自分のように漫画と映画に関わってきた経験のある者なら判るとしたうえで、そんな「プロ」の立場としては、ウケ狙いばかりしている志の低さに好感を持てないし、その軽さゆえ儲かっていることが面白くないと言ってるのだから。

 もちろん、商業作品なのだから利益を出さなければいけない。特に費用が莫大になる映画では、その責任が重いと言える。だからといって、ウケることばかりでは、作家など無用である。それでウディ アレン監督主演の映画にも、失明した監督が映画を撮ってしまう話があって、これはウケるパターンが決まり切っているハリウッド映画に対する皮肉であった。
 
 そして、アニメ界の大ベテランで大御所の杉井ギサブロー監督が「映画はエンターテイメントなのだからヒットしないと意味がない。しかし、ヒットしそうにないものをヒットさせたいよね」という言葉が示すように、いくらウケる方法には熟知していても、それだけではクリエーターとして足りないということだ。

 そういう意味で江川氏が発言したことは明らかである。舌足らずではあったかもしれないが、彼が本業においてはいかがなものかという状態であることとは関係がなく、クリエーターとしては普遍的な問題なのである。





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Commented by materialist at 2016-10-14 23:41 x
作品の出来はともかくとして、『君の名は。』は、監督の思惑以上にウケすぎているみたいですね。
Commented by ケーキイーター at 2016-10-15 08:17 x
 私も『君の名は。』を観てきた。感想を一言で言うと、「こっちも世代交代だ~」
Commented by ruhiginoue at 2016-10-15 19:46
しばらくしたら、大ヒットしたということだけ記憶される作品になるかもしれません。
Commented by ケーキイーター at 2016-10-16 19:54 x
 まあ、確かに、「DVDで何度も繰り返し観たい」映画ではないだろうな。細田守監督の映画を初めて観て、「ぶっとんだ~」感覚は無いな。でも、やはり、世代交代なんだろうな。
 お師匠さんは、昔「ヤマト」や「999」がヒットして、ひと騒ぎになった時のことを言っているのかな。
Commented by ruhiginoue at 2016-10-16 21:35
松本零士が関わった作品は、あまり日本的ではない厭世的個人主義の松本哲学ではウケないということなのか、いつもアニメ化はかなり違ったものになってました。
それで、特に『ヤマト』では今の堕ちた日本が自画自賛しているのとは違う当時の右肩上がりの日本を意識してナショナリズムをテーマにしてウケをとり、ここから松本零士と西崎義展プロデューサーとの対立と裁判沙汰にまでいたるわけです。
それで、こんなことをしてウケをとるなんてと手塚治虫はヤマトを批判し、しかし宮崎駿も手塚治虫の作品だってヤマトと同じことをしてウケているから決別したと言い、ではジブリの作品はどうなのかというと、師匠は本宮ひろしだから自分もそうなのは仕方ないという江川達也に言わせれば、ジブリだって性と暴力を隠し味にしているということになり、そういう流れがあっての発言であることは明らかです。
Commented by ケーキイーター at 2016-10-18 21:39 x
 実写、アニメを問わず、「あれ? これ、原作のマンガや小説とだいぶ違うじゃん」て言われる作品は多いけど。昔のテレビアニメのキャプテン・ハーロックは私としては「こんな男性、私ゃお断りだなあ」と思っていたんですが。で、松本零士さんとりんたろうさんとの間で、やはりギャップが生じていたらしいが。
 何で私が「このハーロックは嫌な人」だったかって? 「男は負けると解っていても、やらねばならないことがある」という台詞。それで、私は「こんな男に付いて行くのは、まっぴらごめん」だったのかな。
 実際に松本さんの描いたハーロックのマンガは未読なので、こっちはコメントしようがない。
Commented by ruhiginoue at 2016-10-18 22:09
ハーロックも沖田艦長も、松本零士のお父さんが反映していて、戦闘機乗りだったけど戦後は「部下を死なせているから」と自衛隊に入るのを拒否して野菜の行商で細々と生計を立てていたうえ、あの戦争は最初から勝つ見込みがないと解っていたのにやってしまった最低最悪の愚かなことだったと息子に説いていたそうだけど、そうした個人の尊厳から来る意地だったものを、アニメになったらナショナリズムからの玉砕精神に改変されてしまったということです。
Commented by ケーキイーター at 2016-10-26 21:37 x
 ところで。お師匠さんは『レッド・タートル』は観たかな? 渋い。途中で眠たくなったけど、観て良かったな。と思っている。
by ruhiginoue | 2016-10-14 20:55 | 映画 | Comments(8)