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by ruhiginoue

賞はもらうよりいらないというほうがカッコイイ

 これまでノーベル文学賞に選ばれたけど受け取らなかったのは二人だが、パステルナークは政治問題になることを恐れて辞退、サルトルは反体制反権威なので拒否、そしてボブ ディランは無視、ということか。

 そういえば、歌詞が文学賞の対象になりうるなら、なぜ生前ジョン レノンは候補にあがってこなかったのだろうかというと、たぶん英国からもらったMBE勲章を返還したから、もしかするとノーベル賞も受け取らないのではないかと考えられたためかもしれない。そう考える人もいる。
 それというのも、勲章を返すさいジョン レノンは英国がベトナム戦争でアメリカを支持したことに抗議すると言ったけど、後に「勲章なんて恥だと思った」と言っているのが記録映画『イマジン』の中にあったからだ。

 そこには他の賞と違い国が与える勲章というものの性質もある。芥川龍之介が「なぜ軍人は酒にも酔わず勲章下げて歩けるのだろうか」と皮肉を書いていたが、ジョン レノンは「戦争の英雄は人を殺して受賞している。人を楽しませたほうがよほど正当な受賞理由」と言って若者の喝采を浴びた。だが、本当の受賞理由は外貨とくに米ドルを獲得して英国経済に多大な貢献をしたからだった。

 また、川端康成が選ばれたのは、他の日本の作家に比べて素直に受け取り政治的に問題ない人だったからとも言われている。大岡昇平は「ノーベル賞に選ばれたのが師匠の川端康成ではなく弟子の三島由紀夫だったら、川端も三島も死ななくて済んだ」と言い、翻訳されて海外に紹介されたらノーベル賞だと言われていた『橋のない川』は、ドナルド キーンらが訳したいと申し入れていたのに、作者の住井すゑは「『雪国』なんかが文学だと思っている人に私の小説は訳せない」と、あいかわらずの毒舌だった。

 あと、大江健三郎はノーベル賞のご褒美に文化勲章という変なシキタリを拒否し、外国の賞はもらっても日本の賞はいらないのかと言われた。同じことを言われたのが黒澤明で、アカデミー賞など世界中の映画賞をたくさん受賞しておいて日本アカデミー賞はボイコットしたためだが、日本アカデミー賞は評判が悪いというだけだ。これは北野武も受賞しておいてその記者会見で皮肉を言っていたほどだ。

 やはり素直にもらっておいて皮肉を言ったのは伊福部昭もそうだった。いまさら国が何の用だと思ったら受賞の知らせなので良かったと思ったが、最初はイラクに行く自衛隊を励ます曲を作れと言われるのかと思ったとチクリ。
 ただ、戦時中は軍から委託というが実態は命令で拒否したら殺されるかもしれなかったという思い出を続けて披露し、笑いを取りながらも冗談ではすまないと言ったのだった。

 その大江健三郎が受賞というさい、ノーベル賞は市民がくれるもので国があたえる勲章とは違うという説明をしていたが、あまり説得力はなかった。
 そんな大江健三郎がせこい処世術をしているという批判は昔からあり、そこで大江を批判してきた本多勝一は賞なんて愚劣なものだとも言い続けてきたが、実は若ころにかなり華々しい受賞歴であり、ボーン上田国際記者賞や日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞その他を受けている。
 ところが、これらを多くの記者たちが得意になってひけらかしているのと違い、著書の裏付けにある著者紹介欄などにも記載しないでいる。
 そして前に受けた菊池寛賞を文芸春秋社に拒否して送り返したり、新聞協会賞はもらっていなかったが、それを「残念」とし、なぜなら今年の選考がひどかったので受賞していたら返して抗議の意思を示せたのにと言ったり。

 ということで、賞はもらうよりいらないというほうがカッコイイが、フランスの勲章として最高位にあるレジオンドヌール勲章を拒否した人は「レジオンドヌールは受賞を拒否するだけでは十分ではない。受賞に値しないことが肝要である」と言っていて、もともと勲章にはそういう性質があるけど、特にこの賞はそれなりの知名度でも俗物という人がもらうものだからというわけだ。
 それで外国人としてもらうのが北野武ということであるから、それだと違和感がない。



by ruhiginoue | 2016-10-19 22:52 | 国際