行楽に韓国へ行く人と核シェルターを買う人
2017年 04月 28日
情勢が緊張しているにしては、連休で海外に観光に出かける日本人の多くが韓国だという。森友とか昭恵夫人とかの問題から話題を逸らそうとする政府のプロバガンダを信じていない人が相当に多いということだ。
しかし、真に受けているのか、もともと関心のあった人がこれを機会にということか、核シェルターがよく売れしているという。
これを販売する会社の社長が雑誌のインタビューに答えて言うところによると、年間販売実績はせいぜい5、6件なのに、4月だけで8件も売れ、留守番電話に100件以上の問い合わせがあったそうだ。客層も激変しており、これまでは富裕層や雑誌『ムー』の愛読者(笑)などが中心だったのに、今回はあらゆる年齢と職業の人から問い合わせがあり、55年間の核シェルター販売で初めてのことだと言う。
この家庭用の核シェルターが販売され出した年代、万一の場合に備えることは必要だという意見もあったし、防ぐ努力をすべきなのに前提にして対策するなんて間違ってるという意見もあった。
当時、少年ジャンプ連載の人気漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』では、主人公の上司が核シェルターを購入しようとしてそこから一騒動となる話があった。ここで主人公は両さんらしい辛辣なことを言う。「自分だけ助かろうって発想が部長らしいぜ」
フィリップKディックの短編小説『フォスター、お前死んでいるところだぞ』では核シェルターを通じて軍拡を暗い調子で風刺しているが、これは作者が大統領の発言「国民がシェルターを政府にあてがわれるのではなく自前でないといけなければ、もっと自らの安全に気を配るようになるだろう」に激怒し、政府は人の命を金に換算して考えるのだと主張するために書いたということだ。
この小説は、だいたい以下のような話だ。
マイク・フォスターは、学校で級友に嘲笑されながら言われた。
「先生、こいつの親父はアンチ(反軍拡主義者)なんです。哨戒機の分担金も払ってないから学校のシェルター使えないんですよ。だから学校にいる時に空襲があったら死んじまうんです」
「こいつの親父の家具屋、潰れかけなんです。だから公共シェルターもに入れないんです」
マイクの下校する途中、空には哨戒機が飛び、通学路には「公共シェルター使用料50セント」の看板が。店のショールームには 「最新モデル核シェルター入荷」 「分割払応相談」などの売り口上が表示されている。
マイクは夕食の席で、シェルターを買ってと頼んでみるが、父は取り合わない。
「また新型か。うまい商売だ。核シェルターは贅沢品ではない、今や必需品。買わなきゃ皆殺しってわけだ」
これは、財政縮小、経費削減が叫ばれ、防衛を国民ひとりひとりに委ねる案が出されたためだ。国民は他人のもの国が用意したものは粗末にするが、自腹を切って手に入れたものは大事にする。だから政府は、哨戒機を飛ばすために賛同者から収入の30%を徴収し、公共シェルターを有料にしたのだった。
その翌日の授業は、フォスターの苦手な、空襲のさいに有害物質を吸い込まずにシェルターまで走れるよう息を止めて全力疾走する訓練だ。
「フォスター、真面目にやれ!本当ならお前、死んでるとこだぞ!」と体育教師が怒鳴る。
しかし帰宅すると、業者が庭にシェルターを設置していた。
「マイク、これはお前のために買ったんだ。分割払いがあって助かった」
また、父は哨戒機の分担金を払ったので、マイクは学校のシェルターを使えるようになった。
うれしくてマイクは寝る前の数時間を庭のシェルターで過ごすようになった。
しかし、ある日マイクが帰宅するとシェルターは無くなっていた。彼の父の店がいよいよ赤字になり、オプションを買うどころか月賦も払えなくなり返品したのだった。
「でも哨戒機の分担金ぐらい払えるから、お前は学校のシェルターを使える」
そう父は言ったが、マイクは落胆した。
シェルターの販売店はクリスマスセールで賑わっている。マイクは店員の目を盗んでショールームに展示してあるシェルターに入ったが、すぐ店員につまみ出され罵倒された。
「公共シェルターがあるだろう。月賦も払えんくせに」
マイクがクリスマスで賑わう街を彷徨っていると暗くなってきて、けばけばしいネオンサインが目立つようになった。
「神の祝福を。公共シェルター、入場料50セント」
by ruhiginoue
| 2017-04-28 17:49
| 文学