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by ruhiginoue

『ファイアースターター』リメイクと『炎の少女チャーリー』

 スチーブンキングの小説『ファイアースターター』が、再映画化されるそうだ。
 この前の映画化は84年だったが、小説を読んだ人たちは内容の改ざんに驚きあきれたものだった。小説で描かれた内容をうまく映像で表現できないとか予算の都合でお寒いとか、そういうことならよくあることだが、この『ファイアースターター』の映画化である邦題『炎の少女チャーリー』は、その改変の仕方がひどかったのだ。

 例えば、映画では主人公の父親が政府機関に追われて救いを求める手紙を出すと雇われた殺し屋が郵便局員を殺害して手紙を奪ってしまうのだが、原作の小説では政府機関の職員が権力を笠に着て郵便局員から手紙をひったくり開封してしまうのだ。それも、自分は政府の者だと堂々と名乗って。
 「令状はあるのか」と郵便局員か問うと「そんなもの要らない」と高圧的な態度。「それではだめだ。政府の仕事でも、裁判所に申請して令状を取らないといけない。通信の秘密は憲法で保障された国民の権利であり…」
 「うるさい。我々には憲法なんて関係ない。痛い目に遭いたくなければ黙れ」
 これに郵便局員は、相手は国家権力が背広を着て立っていると感じた。そして、自分の父親は戦争で国のために戦ったが、それは自由と権利を守る国のためで、こんな横暴は許せないと悔しがる。地元の議員に相談しようと思うが、果たしてそれで力になるだろうかと不安でもある。

 また、最後に映画では、主人公チャーリーがたまたま出会って親切にしてもらった農場の老夫妻が、そこへ押しかけてきた政府の諜報機関の横暴に怒り、マスコミに訴えようとチャーリーを連れてニューヨークタイムズ社を訪れ、これで大丈夫という結末。
 しかし原作では、政府の者だと言えばよいという態度で令状なしに当たり前のように不法侵入してきたことを目の当たりにした老夫妻は、これではどこでも手が回っているだろうと察し、マスコミに取り上げてもらい世論に訴えようとしても圧力がかかって報道はしてもらえないかもしれず、政府の機関ならとうにお見通しだろうから、ニューヨークタイムズ社へ行ったらそこのロビーで待ち伏せされているかもしれないと危惧する。
 この老夫婦の会話を聞いたチャーリーは、迷惑をかけないようにと置手紙を書き独りで出ていく。そして、訴えを聞いてくれるところはないかと悩み、図書館を訪ねて司書なら教えてくれるかもしれないと質問する。この質問に司書は困惑する。
 「ほんとうの報道をするところはどこですか?独立したマスコミはありますか?政府の紐付きではないところは」

 このように、小説で作者が突き付けている問題が、映画化では気が抜けたようになっていたのだ。これをリメイクしたら、どうなるのだろうか。




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Commented by ケーキイーター at 2017-04-30 21:17 x
 読んでみようかな。原作小説を。予定は未定だけど。文庫で出ていますか?

Commented by ケーキイーター at 2017-04-30 21:28 x
 ひょっとして、今は絶版? 映画化されるなら、再発売されるかな? で、この以前の映画って、音楽がタンジェリン・ドリームだったんだ。
Commented by 二胡 at 2017-04-30 22:10 x
大好きな小説を取り上げてくださりありがとうございます。ニューヨークから日本に帰る空港のロビーで買い、飛行機の中で夢中になって読み切りました。ひょっとしたらあの読書体験が、あまり政府を信用しなくなった原点だったのかもしれません。

原作でチャーリーは司書のアドバイスをもとに、全然違う編集部に行ったはずです。「音楽に政治を持ち込むな」とかいう人達が幅を利かせている日本では伝わりにくい結末かもしれませんが、私は幼心に納得しました。
Commented by ruhiginoue at 2017-05-01 18:07
小説は新潮文庫から深町真理子の訳が出てます。映画はドリューバリモア主演に、脇をジョージCスコットにマーチンシーンにアートカーニーとベテランがしめていますが、ただの活劇になってました。監督は『コマンドー』のマークLレスターですし。音楽はタンジェリンドリームで、八十年代はよく映画音楽を担当してましたね。

原作では最後に『ローリングストーン』誌を訪ねるけど、ここはのちに変節し、反体制ロックではなくブランド品に身を固めたMCハマーが出たり、ブッシュ父の共和党政権を支持したり、ということになりました。それリメイクはどうなるのでしょうか。
Commented by ケーキイーター at 2017-05-01 21:15 x
 新潮文庫って、日本の文庫では最大手みたいですね。
Commented by 名無し at 2017-05-02 18:31 x
へー、映画化した時の内容が「水戸黄門」のパクリだとは全く知りませんでした。
Commented by ケーキイーター at 2017-05-07 12:04 x
 新潮文庫の方は、今は絶版になっているみたいです。新潮社のサイトで探してみました。ブックオフにでも行って、探そうかな。しかし、昨日またELPがらみの本買っちゃったし。そっちを読まないと。
Commented by ruhiginoue at 2017-05-07 15:48
アマゾンの古本にはありますね。
Commented by ケーキイーター at 2017-05-07 20:34 x
 ぼちぼち行きます。「映画化」ということで、再発行される可能性もあるかな?
Commented by ruhiginoue at 2017-05-08 22:09
「映画化」という帯を付けて書店に平積みされるでしょう。おそらく。
Commented by ケーキイーター at 2017-05-11 20:57 x
 これをきっかけに、お師匠さんに質問コーナー。外国語の著書の翻訳権も、著作権同様、年数が経つと、切れちゃうんですか? 例えば、『ゲド戦記』で今出回っているのは清水眞砂子さんの本だけですが、『赤毛のアン』は村岡花子さんの翻訳ものだけでなく、あちこちの出版社から色々な人の訳した本が書店に出回っているでしょう。

 私は一定の大きさ以下の本に、書店のブックカバーで包まれていないと落ち着かない変な癖がある。だから、アマゾン等で本を買わないのも、理由の一つかもしれない。まあ、ネット通販で「カバーかけますよ」って言う書店もあるけどね。だから、お師匠さんの著書も、書店で注文して、「入荷したよ」て連絡が入ると買いに行く。ついでに、お菓子も買ってくる。こうやって、人生を楽しんでいるつもりなのだが。
Commented by ケーキイーター at 2017-05-13 20:40 x
 翻訳権の事は、自分なりに調べてみました。何となく解った様な感じ。
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by ruhiginoue | 2017-04-30 18:04 | 映画 | Comments(12)