『ファイアースターター』リメイクと『炎の少女チャーリー』
2017年 04月 30日
スチーブンキングの小説『ファイアースターター』が、再映画化されるそうだ。
この前の映画化は84年だったが、小説を読んだ人たちは内容の改ざんに驚きあきれたものだった。小説で描かれた内容をうまく映像で表現できないとか予算の都合でお寒いとか、そういうことならよくあることだが、この『ファイアースターター』の映画化である邦題『炎の少女チャーリー』は、その改変の仕方がひどかったのだ。
例えば、映画では主人公の父親が政府機関に追われて救いを求める手紙を出すと雇われた殺し屋が郵便局員を殺害して手紙を奪ってしまうのだが、原作の小説では政府機関の職員が権力を笠に着て郵便局員から手紙をひったくり開封してしまうのだ。それも、自分は政府の者だと堂々と名乗って。
「令状はあるのか」と郵便局員か問うと「そんなもの要らない」と高圧的な態度。「それではだめだ。政府の仕事でも、裁判所に申請して令状を取らないといけない。通信の秘密は憲法で保障された国民の権利であり…」
「うるさい。我々には憲法なんて関係ない。痛い目に遭いたくなければ黙れ」
これに郵便局員は、相手は国家権力が背広を着て立っていると感じた。そして、自分の父親は戦争で国のために戦ったが、それは自由と権利を守る国のためで、こんな横暴は許せないと悔しがる。地元の議員に相談しようと思うが、果たしてそれで力になるだろうかと不安でもある。
また、最後に映画では、主人公チャーリーがたまたま出会って親切にしてもらった農場の老夫妻が、そこへ押しかけてきた政府の諜報機関の横暴に怒り、マスコミに訴えようとチャーリーを連れてニューヨークタイムズ社を訪れ、これで大丈夫という結末。
しかし原作では、政府の者だと言えばよいという態度で令状なしに当たり前のように不法侵入してきたことを目の当たりにした老夫妻は、これではどこでも手が回っているだろうと察し、マスコミに取り上げてもらい世論に訴えようとしても圧力がかかって報道はしてもらえないかもしれず、政府の機関ならとうにお見通しだろうから、ニューヨークタイムズ社へ行ったらそこのロビーで待ち伏せされているかもしれないと危惧する。
この老夫婦の会話を聞いたチャーリーは、迷惑をかけないようにと置手紙を書き独りで出ていく。そして、訴えを聞いてくれるところはないかと悩み、図書館を訪ねて司書なら教えてくれるかもしれないと質問する。この質問に司書は困惑する。
「ほんとうの報道をするところはどこですか?独立したマスコミはありますか?政府の紐付きではないところは」
このように、小説で作者が突き付けている問題が、映画化では気が抜けたようになっていたのだ。これをリメイクしたら、どうなるのだろうか。
by ruhiginoue
| 2017-04-30 18:04
| 映画