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by ruhiginoue

弁護士は自分が逮捕された経験が無いという限界

 『報道ステーション』というテレビ番組は、周防正行氏をゲスト出演させ「共謀罪」についての批判を語らせていたが、それは彼が『それでもボクはやってない』という映画を作り日本の司法が抱える問題を追及し、これをきっかけに法制審の委員を務めるなど発言を続けていたからだ。
 ところで、この映画は電車で痴漢と疑われ逮捕された男を主人公にしたものであったから、先日の事件すなわち電車で痴漢と言われて逃走した男性が転落死したことについて、何かコメントするだろうと期待した人もいたのだが、この期待は裏切られたという。

 この、痴漢にされそうになった場合の対処について、あるマスコミにもよく出る弁護士は、逃げられそうならその場から一目散に逃げてしまうのが一番だと、テレビなどで公然と発言していた。なぜなら、逮捕されるだけでも大変なことになり、そのあと裁判になったらもっと大変で、しかも裁判が公正とは到底言えない実態があるからだ。
 もちろん、これは逃げきれたらの話で、失敗してしまうこともある。そうなると不利になるだろうし、線路に逃げたら鉄道から損害賠償を請求されるし、それ以前に命の危険もある。
 だから、逃げないで弁護士を呼ぶべきだという弁護士たちがいて、これには疑問や反論が出ている。それらは要するに「きれいごと」だというものだ。

 まず、警察は弁護士を呼べないようにするものだ。「先進国」なら警官は弁護士に連絡する権利を告知しないといけないなどと決まっているが、日本は違う。
 また、弁護士を依頼したところで冤罪から救われる保証はない。日本では逮捕イコール犯罪者に近い。
 なにより、弁護士はあくまで「法の枠内」で勝つ専門家にすぎず、我々はそれより大きな「人生の枠内」で勝たなければならないのだ。罪を被せられた時点で既に大打撃であり、そのあと無罪を勝ち取っても破綻した人生は取り戻せない。
 こうなると、ほんの数パーセントでも賭けて逃走するという考え方も理解できなくはないし、だから弁護士のなかにさえ、それで成功するに越したことはないと言う者がいるのだ。

 そもそも、潔白なのに逃げると危険があるってことくらい誰でも知ってる。言われなくたって解っていることだ。それでも命がけで逃亡するのは、弁護士や裁判官が信用できないからだろう。それほど日本の法曹界は不信を買っているのだ。国選弁護士や弁護士会の当番弁護士に裏切られたとか、裁判は暗黒の魔女狩りとか、そういう現実が歴然とある。これを無視して弁護士を呼ぼうというのでは「きれいごと」と批判されても仕方ない。
 だいたい、有罪でも無罪でも勝訴でも敗訴でも、裁判の結果がどちらにしても、依頼人は人生を浪費してしまった負け組であり、どちらにしても報酬を得られる弁護士は勝ち組である。それでも弁護士に頼もうと呼びかけるのでは、善意で言っても商売のためかと疑われるだろう。

 前にも述べたが、知り合いの男性はカフカの小説さながらに逮捕のうえ性犯罪の犯人とされ刑務所に入ったが、真犯人が捕まり自供したので潔白と判明し国から賠償金が出た。
 このさい彼は国選弁護士に裏切られ、知らぬ間に勝手に犯行を認めたことにされてしまっていたのだった。これが問題になると、その弁護士が所属する弁護士会は、金を出して私選弁護士を雇わなかったのに文句を言うなと開き直った。

 あのとき、逮捕されたころへ来た弁護士が、任せなさいと言うので信用していたら、囚われている間の知らぬ間に犯行を認めたことにされ、勝手に親族を尋ねて被害者に慰謝料を払うからと出させていた。それも自己責任というわけだ。
 そして性犯罪の前科者となり偏見を受け、複数の免許を持ちながら職が無い彼は自殺未遂までした。リストカットの傷跡が痛々しかった。
 その後、名誉回復され社会復帰したが、捜査の不当性を問い国賠訴訟を起こしたら、職場に対し警察が嫌がらせをした。すると「人権派」「左翼」の人たちが「支援」すると寄ってきたが、「反権力」を叫ぶネタに利用されただけ。
 ついに彼は、裁判のため弁護士費用その他で出費がかさみ、無実なのに刑務所に入ったことにより受けとっていた賠償金を使い果たしてしまった。そのうえ心身ともにボロボロになって働くこともできなくなり、生活保護を受けて病気療養している。

 このように、潔白が完全に証明された人でさえ、いったん権力から目を付けられてしまったら人生が破滅的となるのだ。
 これについて弁護士に文句を言っても酷というものだ。どんな名医でも保健福祉政策はどうすることもできないのと同じだ。
 また、不当逮捕され無罪となった経験があるため同じ目に遭った人の相談に乗っている人が「弁護士は自分が逮捕されたことがないので実態を身をもって知らない」と言っていた。これは専門医が病気について詳しく知っていても病人の苦悩は知らないというのと同じだ。
 だから専門家の話は常にそれゆえの限界があるということを前提に話を聞かなければならない。
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Commented by 名無し at 2017-05-15 15:33 x
この問題では「死刑廃止の会四国フォーラム」とか弁護士の側の生田輝夫氏でも同じです。
いえむしろそれどころか、反体制組織や被害者で苦しむ人々こそが
山本七平先生が見抜かれた「日本教の呪縛」とやらに深く囚われる苦しみに執着致しております。

かつて20年近く前に、ドイツの女性呪殺術師の、ウラ=フォン=ベルヌス先生の事例を話しました。
「ビスマルク戦法を使用しましょうよ。日本国の刑法でも呪殺だけでは無罪扱いですし、
 効果がなければ頼み料の一万マルクは返金してくれますから」と提案したところ
 まるでキ○○イの様な反応をして「そんな行為は無償のヴォランティアですべきでしょうが」と
怒鳴られ無視されました。結果は労働時間に換算すると2億円の才能の無駄遣いで
後藤田正晴先生の掌の中で踊らされている無様さでした。

日本では、反体制組織や市民運動の連中ほど、無意識に「日本教」なるイデオロギーの
呪縛にかかっていて呪縛の中で殉教する行為が偉いとの洗脳が強いです。
「日本教」が認可しないものはどんなに素晴らしい技術や技法であっても
アウトオヴ眼中なのであります。
Commented by 名無し at 2017-05-15 15:43 x
日本教の正体とは、近現代文明病であります。
かつての村落共同体が崩壊して人々が都市に人々流入して数十年が経過すると
大過密地帯の中心部の住民たちに国別を問わず程度の差はあれ固定する社会現象状態です。

山本七平先生のたとえられた社会体制とそこに住む人々の意識についての出典は
「葬送の自由をすすめる会」の機関誌会報の「再生」に、
山本七平先生とは多分全く面識がないと思われる文化人類学者の人々の現地調査で
調査場所は、インドネシアのジャカルタとバンドンおよび
ブラジルのリオデジャネイロとサンパウロでありました。
もう10年近く前の依頼執筆原稿からです。
Commented by ケーキイーター at 2017-05-17 15:27 x
たった今ね、そちらに非公開のコメントを送ろうとしたら、「使っちゃいけない言葉を使ったらしい」ということで、拒絶された。余計、頭に来た~。プンプン
Commented by ruhiginoue at 2017-05-17 18:58
確認してみたら、キーワード禁止設定はしていなかったので、不可解です。前に、語順から別の言葉になって該当するものと判断をされることがあるので、すべて解除したのですが。
念のためもう一度やり直してみました。
Commented at 2017-05-17 21:06 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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by ruhiginoue | 2017-05-14 17:42 | 司法 | Comments(5)