高須クリニック院長が国会議員を訴える本当の意図
2017年 05月 19日
美容外科の高須克弥院長が、大西健介民進議員と蓮舫代表を名誉毀損で提訴するという。
これは厚労委での質問の中で同議員が、医療機関によるイメージ宣伝は利用者にとって有益ではないと指摘したことに対してだ。
そのさい一例として「イエスまるまる」とクリニックの名を連呼するだけのものがあると言っていたが、これは高須クリニックの「YES!高須クリニック」という宣伝を指していることが解るので名誉毀損だと言う。
これには驚いた。あのCМで高須院長は「YES」と言ってたのか。「Nazis」だと思ってた。普段の発言から、そうとばかり思っていた。
しかし、あのときの同議員の質問とは、医療機関の広告には厳しい規制があるから具体性の無い広告しかできないが、するとイメージ宣伝が幅を利かせ、この現状はいかがなものかという内容だった。
この質問自体は当然のことで、一例として出した広告はそうした規制の範囲という趣旨だ。広告を出したほうが怒ることではない。
そして、すでに法的な指摘が専門家たちから出ている。
まず、憲法51条に「議院で行つた演説、討論又は表決」は絶対的免責的特権がある。また、国家公務員である国会議員の職務上の行為について違法性を追及するには国家賠償法によらなければならず、その場合は個人責任を問うことが認められていない。
だから二重に勝ち目がないというわけだ。
これは法にそう規定のうえ、過去の判決でもそうだった。最高裁平成9年9月9日のスリーナイン判決は、ある国会議員がある病院長の問題行為を例に出して質問したため名誉毀損で訴えられたが、免責となっている。
しかも、国家賠償請求なら可能とはいえ「職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があること」が要件であるから、これにまったく該当しないことは明らか。
それでも高須院長が訴えると言うのは、宣伝とか目立とう精神発露とかのパフォーマンスであろう。
なのに引き受けた弁護士は、法的に無理だと専門家なら解って当然なのだから、勝訴の見込みが皆無に近いのに金のため付き合ったという悪評が立つだろう。
そういえば昔、東進スクール最初のころ、経営者がネトウヨみたいに「日教組が学校教育を悪くした。だから塾が繁盛している」とわめきちらし、これを日教組の悪口ならなんでも飛びついていた週刊新潮がとりあげ、そうやってタダで宣伝してもらった。
これと同じことを高須クリニックも意図しているという、毎度のことだろう。
by ruhiginoue
| 2017-05-19 19:39
| 司法