ドイツ統一でコール首相を美化してはいけない
2017年 06月 27日
いまドイツに関する本を連続して読んでいるが、その中に、かつてドイツではナチスが高支持率の一方で増大する軍事費のため税金と社会制度の掛け金が値上げされ国民が苦しみ出す、という話が出てくる。そして無関心だった人からナチスを支持していた人にまで疑問が発生するのだが、その時ナチスは反対を取り締まり弾圧する体制を整えていた、ということで、今の日本もそうだろう。
だから選挙で共産党の候補者が「憲法九条を守る」と街宣やポスターで謳っているのを見かけて思ったのだが、それだけでは観念的で具体性が無いし、自衛隊を海外に出す危険という話はしているけれど身近さが乏しいのだから、軍拡による高負担が庶民にのしかかってくる恐怖も訴えるべきだろう。
ところで、ドイツのコール元首相が死去したという報道が先日あった。ドイツ統一(正確には再統一)の立役者という報道しかされていなかったが、この人が中心になって行われたドイツ統一は、その後の世界に多大な害毒を垂れ流したので、実は今の世界の混乱の「戦犯」の一人と言っていい。
この人の所属する旧西独の政党「キリスト教民主同盟」は、宗教界との関わりがあったのではなく、ただヨーロッパ共通の伝統的価値観という意味でキリスト教を名乗っていただけで、すなわち保守派ということであり、これと同じ名前の政党は旧東独にもあった。
そして西側の党が東側の党を抱き込んで、西が東を併合する形で統一するという公約を掲げて選挙をしたのだが、統一したら東西の貨幣を等価交換するという条件であり、これだと西に比べて安い東のドイツマルクは突然価値が何倍にもなるわけだから、実質的には有権者の買収であった。そして選挙で圧勝する。
その後は倒産と失業で混乱が起きるのだが、そこまで見通すより金の力に負ける人が多かった。そういう有権者だけが負けたのではなく、東側で権力から迫害されながら人権や自由のために運動してきた人たちと、その支援をしていたキリスト教会(政党名に掲げただけの保守派ではない本当の聖職者たち)の推す勢力は惨敗した。
これは世界中に影響し、自由とか人権とか民主とかいうけど要するに金だという風潮が世界中に定着してしまい、進歩的な勢力は無力感に陥り、欧米の資本主義は無条件に正しいので世界中に介入して金任せでも武力任せでもやりたい放題ということにエスカレートしたのだった。
つまり今の世界中にあるもめごとの原因の、少なくともそのうちの一つであるのだが、そういうことをマスメディはろくに追及していないのでイライラさせられる。
by ruhiginoue
| 2017-06-27 15:38
| 国際