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by ruhiginoue

スターウォーズの新作はもうけっこう

 映画『スターウォーズ』の制作を引き継いだディズニー社が、さらに新作を作って発表するという話に、映画ファンの間から、もううんざりという声が出ている。飽きたということとともに、もう『スターピース』にして欲しいということだ。現実が無邪気ではいられないのに、映画で楽しんでいられるか。いつまでも戦争が続く感覚に浸っていては、ほんとうの世のなかに平和がこない。
 そういうことだ。

 かなり前から、『スターウォーズ』が大ヒットして映画がつまらなくなったと言われている。
 それについて、『スターウォーズ』に大きな影響を与えた黒澤明監督は、どう思うかとインタビューで問われて「『スターウォーズ』は面白かったけど、それが大ヒットした影響で表面的な刺激の映画ばかりになってしまったからだ」と言っていた。
 もともと、『スターウォーズ』が最初に発送された70年代、「アメリカンニューシネマ」の全盛で暗かったり厭世的だったりして、わざとハッピーエンドを避けていたりもした。
 そして『タクシードライバー』などにみられるようにベトナム戦争の影を引きずっていた。

 ところが、77年になり、長らく停止されていた20世紀フォックス社のロゴの音楽(映画音楽の巨匠で同社の音楽部長でもあった作曲家アルフレッドニューマンによるファンファーレ)が復活して威勢よく♪パンパカパーンと鳴り響き、SFなのに「昔、昔、」という説明の字幕とともに映画が始まると、往年の無邪気な勧善懲悪物の活劇は、このとき本格実用化されたドルビーシステムによるサラウンド音響が轟音を蹴立てながら開始されたのだった。

 こうして、SFだからと戦争を堂々と娯楽と化した。例えば爆撃機映画など現実の戦争の悲惨な犠牲者を考えれば絶対に楽しめないということになっていたのだが、娯楽で空想に遊ぶものだからということで、回転式砲座で迎撃機を無邪気にぶっとばすのだ。
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 それから10年経ち、東京国際映画祭で、当時『プラトーン』が大ヒットしていたオリバーストーンが来日し、もう一つの大ヒット映画『トップガン』を戦争美化の軍国主義映画だと批判しながら、『スターウォーズ』もアメリカでは右翼に利用されていると問題にした。
 現実の戦争には政治や経済が絡み、敵にも味方にもそれぞれ言い分があるのに、『スターウォーズ』の銀河帝国とダースベイダーなど、とにかくSFは単純で、絶対悪を倒すのが正義だという図式で、そんなものを観る人々に押し付ける。これが「悪の帝国」を倒すという国策臭さに転じたということだ。

 これだから80年代に入ると映画はダメになったのだと言う指摘があり、そこでウォーレンビューティーは「黒澤明監督の作品のようなものはハリウッド映画には無理になってしまった」と言った。
 これに対しオリバーストーンは、それでも80年代のハリウッド映画は傑作ばかりだと反論していた。80年代の傑作は60年代と70年代の傑作を合わせた数より多いと言う。自分は『プラトーン』を作ったし、ウォーレンビューティーだって『レッズ』を作った。他にも『ブレードランナー』や『ブルーベルベット』などがあった、ということだ。
 そう言われればそうだという映画は色々あった。

 このような経緯なのだから、もう『スターウォーズ』の新作はけっこうである。



by ruhiginoue | 2017-11-13 16:35 | 映画