コメントの他に、表示されている著書をクリックしてその感想をアマゾンのレビューに投稿してくださることも歓迎です。おたよりはこちらへruhiginoue@excite.co.jp


by ruhiginoue

「12人の怒れる男」と「カラーパープル」

 日本で「裁判員」なる「陪審員」とも「参審員」とも異なる奇妙な制度が猛批判の中で始まるが、ロシアの監督・俳優として大変有名なニキータ・ミハルコフが、アメリカ映画「12人の怒れる男」を翻案して映画化した。
 この話は、親殺し事件裁判の事実認定で陪審員たちが議論するうちに、最初は有罪と決めてかかっていたのに、慎重に検討してみると無罪の結論となるものだ。
 ミハルコフ版では、ロシア人の養父をチェチェン人の養子が殺害したことになっているが、基になるアメリカのルメット監督版では、アフリカ系の家庭で息子が父親を刺し殺したとされる事件であった。
 どちらも、人種偏見から、やったに決まっているという予断を持っていて、それを批判して描いているのだが、アメリカ版ではその偏見の原因として、黒人家庭で親殺しはよくあることだから、というのだ。これは日本の漫画「ブラックジャック」にも、主人公がニューヨーク滞在中の話で会話の中に出て来た。
 スピルバーグ監督の映画化によって外国にも有名となった「カラーパープル」というピューリッツアー賞小説では、アアフリカ系アメリカ人の家庭の亭主関白と男尊女卑と家庭内暴力が辛辣に描かれていて、だから映画を観ると人種問題よりフェミニズムがテーマかと思ってしまうし、監督がユダヤ系だったこともあり、黒人差別の映画だと非難した人までいた。
 しかし、黒人家庭がそうなってしまうのは人種差別があるからで、社会に出て抑圧ばかりだから、そのストレスから家庭に入ると爆発が起きてしまうのだ。原作者のアリス・ウォーカー自身、子供の頃に家庭内暴力に遭って片目を失明している。彼女の兄が物を投げて当たってしまったのだが、その兄は親のせいでイライラしていたし、親も差別や貧困でイライラしていたのだった。こんな中ではとうとうキレた子供が親を刺してしまうなんてことはありがちで当然だろう。
 だから彼女は、「片目の視力を失ったかわりに社会への視野と観察力・洞察力を得た」と言って社会派小説を書き続けた。そして抑圧された者が暴力に走るとの図式を熟知しているため、「テロとの闘い」という大義の偽善とイラク戦争を、もっとも勇気が要る時期に批判していたのだった。
 日本でも、親子のあいだで暴力沙汰とか時には殺人になる事件が発生するが、やはりここでも、子供は親からストレスを受けてイライラしており、その親は社会から抑圧されてイライラしていると考えるのが自然というものだが、視野を持つことは難しいし、持ってもそこから発言するには勇気がいるのだ。

 Excite �G�L�T�C�g : �Љ�j���[�X
[PR]
by ruhiginoue | 2008-09-02 11:05 | 社会 | Comments(0)