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by ruhiginoue

魔術師、還らず。狛江市

 この話題はあまり気が乗らないのだが、何か言えと煩いので譬えながら気楽に述べることにする。
 
 東京都狛江市の市長選挙は、四期十六年に及んだ矢野裕市長が勇退を表明し、後継候補として元市議会副議長の田辺良彦市議が辞職して立候補、保守派に僅差で敗れた。
 この敗北の結果について田辺は、「矢野市政を受け継ぐことができなかったことは不徳の致すところで、申し訳なく思う。支援者の方たちにおわびしたい」などと語ったそうだ。
 
 矢野市長は元共産党狛江市議会議員団幹事長で、市議から市長まで選挙で落ちたことが無い「不敗」の人である。これは共産党としてはきわめて珍しい。しかも市長選挙では、反共で野合した自民・公明・民主・生ネ・連合東京を破った。大要塞を極少数で攻略したようなものである。
 それで、このブログでは前に「不敗の魔術師」「ミラクル・ヤノ」と称えたことがある。また、当方の書いたことが機関紙『しんぶん赤旗』に引用されたり、記者にインタビューをうけコメントが掲載されたりしたこともある。 

 しかし困ったことに、共産党は無邪気にはしゃいでいた。『赤旗』は満足な分析をせず狛江に続けと叫び、他の地方では議員たちがブログなどで「快挙」とおめでたいことを言っていた。
 共産党だけで勝てるなら、都知事だってなんだって、もっと共産党が勝っているはずだ。
 狛江市は長年にわたる保守政治の中で腐敗が進み、ついに前市長がバカラ賭博で借金夜逃げ汚職の発覚で逮捕という前代未聞の不祥事が起き、東京の中で目立たない日本で三番目に小さな市が一躍全国に知れ渡った。市民が怒り、保守派もあえて共産党候補に投票した。
 それだけなら一期だけで終わっている。ところが四期十六年続いた。それも、他党派の包囲網のなかで、マスコミも含めた敵から集中砲火を浴びながら。
 それはなぜか。市民が共産党を説得して成立した政権だったからである。矢野議員を辞職させ市長選挙に立候補させることを、共産党本部は反対した。リスクが高すぎるから当然だ。
 しかし市民団体が、熟考のうえ二桁人数の候補者から選んだという事実は無視できなかった。そして市民団体と地元共産党は徹底的に細かく政策を擦り合わせて合意すると、共産党本部を説得した。最初は断念を迫った共産党も、政策合意の緻密さを知ると反対を撤回して支持と支援を決めた。
 社民党の保坂展人議員(現世田谷区長)も、隣の世田谷から応援に来た。排他的な共産党選挙としては異例である。だから矢野市長を推した勢力は、広範なうえ単なる野合ではなかった。それが強みであった。
 こうした経緯により誕生した市長なので、政策も党派色は押し出さず、突出していた土木建設費用を削減して福祉にまわし、芸術振興に力を入れた。市民集会に出席したときでも、例えば狛江市は『岸辺のアルバム』のモデルだが、多摩川の氾濫など災害のとき、自衛隊の出動を要請するかまでも、市長は市民集会で直接対話して意思表示や決定をしている。
 こうして、反共攻撃は結果として反市民となる構図を作りあげることに成功した。だから矢野市政は持ちこたえられたのだ。議会で多数派の自民公明民主の野合による不信任攻撃にも曝されたが、これを何度も乗り切った。このとき矢野市長は心労から白髪が一気に増え、これを見た市民が心配して応援のため市議会傍聴に駆けつけたのである。ここが足立区とは大違いだった。

 これを理解できない共産党が、ついに縁故政治をはじめてしまったことは、前に狛江市の共産党はどうしてしまったのか で、指摘した。(リンク先を参照)
 そして市長の甥は選挙向けのブログを作り、冒頭からタイトルに文字絵が使われていて、もちろん文字絵の使用が直ちに悪くはないが、しかし選挙に立候補します「よろしくお願いしますm(_ _)m」ではなく、「はじめまして(・∀・)つ。岡村しんです」だった。
 その後も、地元の保守派政治ブログで、市長の甥の岡村議員のブログは大体が「今日は何々でした。何々だと思いました」というもので、小学生の作文並みだとコケにされてきた。
 そして引退するベテラン市議の後釜となった市長の甥は、その「地盤・看板・鞄」をそっくり譲られた。しかも共産党の広報では選挙前から議員扱いである。これについて市長の掲示板では、引退する議員の票を受け継がせるなどして市長の甥を市議にすることは、縁故政治ではないか、長期政権による堕落ではないか、との批判に狛江市共産党の責任者として田辺良彦はこう応じている。
 「なぜここまでのご批判があるのか、正直理解できません」「後を引き継げるかどうかは、有権者の皆さんが判断するものです」(2011.05.07)
 これでは二世三世が跋扈する自民党と同じであるが、この田辺も祖父が共産党の議員であった。そして、どういう経緯か不明で、田辺は単に矢野市長から後継にと言われたとだけ説明があり、市長選挙に立候補して敗北した。
 これについて当人の言を当てはめれば、「有権者のみなさん」は、田辺では「後を引き継げ」ないと「判断」したわけだ。

 先の譬えを続けると、ヤンの後継者がユリアンではなくフォークだったようなものである。岡村伸と田辺良彦を足したらフォークである。キャラ説明は「ニコニコ大百科」に、誰が書いたか未確認だが、小説とアニメに基づいて、きちんとまとまっているので、抜粋引用させてもらい手抜きすることにする。

 アンドリュー=フォークとは、『銀河英雄伝説』に登場するキャラクターである。
 フォークは個人的なコネで作戦案を最高評議会に持ち込み、これを最高評議会は「軍部からの作戦案」として承認した。
 肝心の作戦案は「多数の同盟艦隊で侵攻し」「臨機応変に対応する」という、作戦の目的が全くないものであった。会議に同席していたアレクサンドル=ビュコックは「ようは行き当たりばったり」と酷評し、同じく同席していたウランフらも呆れていた。
 フォークには「軍事行動はそれを実施・成功することにより、政治及び社会目的を達成する助けとなる」という、軍事の常識が全く欠如していたことが明白である。
 ビュコック中将は撤退を司令部に進言するも、対応したフォークはまともに取り合わなかった。これに対し、ビュコックは次のようにフォークを強く叱責している。
 「他人に命令するようなことが自分にできるかどうか、やってみたらどうだ!!」
 これでフォークは癲癇性ヒステリーを起こして卒倒してしまう。
 同盟軍の限界を見計らい、ローエングラム艦隊は攻勢に出る。被害は尋常なものではなかった。
 以上だけでも相当な罪だが、これ以上に後世の人々の怒りを買ったのがヤン暗殺への加担である。

 自分が市長の甥だと威張り散らし、議員になる前から、選挙運動のとき自分で働かず命令ばかりしていた岡村伸に、ビュコック中将の言葉はピッタリだが、他にもその信じられない愚かさの実例を挙げていたら際限なくなる。しかし問題は個人の資質とか縁故だけではない。

 相手候補は官僚出のうえ高齢であり、外見も印象が良くなく、演説も口ごもってばかりで力がなかった。政党の相乗りで組織的支援はあっても、これが逆に政党不信から票を失うのが今の風潮でもある。

 有効投票数  29932  高橋くにひこ  16377
               田辺良彦    13555

 この結果に、同市の社民党の議員は、ブログでこう指摘した。

 「田辺氏は善戦した。1500票をひっくり返せば勝利だったのに驚く。広報を普通につくれば勝っただろう。だが、そうできないのが共産の限界」
 「広報の変てこさ・異常さに気がつかないのが共産党の限界」
 「『愛している』などという奇妙なことばや『やるっきゃない』『第2次矢野市政を引き継ぐ・支える』などという変てこで政策が書いていない広報が大問題」
 「普通に、磨きこんだ政策をいかに限られた紙面に載せるか腐心することなく事前ビラを撒きまくってしまう」
 「事前の大量なビラ・街中を歩きまわるメガホン集団はどこから発想するのか???」
 「ポストの中が腐りそうなぼけた顔写真ののったチラシに市民はうんざりというより背筋が寒くなるほど恐ろしさを感じたと思う」
 「与党ボケした政策運営に市民が怒っていることに気づかず『素晴らしい成果!!』」
 「でかいピンボケ写真、薄黄色と薄緑のカラーのチラシ」

 この指摘のとおり、狛江の共産党は『銀英伝』のフォークを意識し、態度から作戦までを真似たのではないかというほど、やることがソックリであった。狛江市の共産党議員は、次の選挙で大敗する可能性があるけれど、その前に全員辞職するべきだ。
 
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by ruhiginoue | 2012-06-26 12:55 | 政治