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井上靜に関するblog(網誌)です。下記の著書を読んでもらえたら嬉しく存じます。


by ruhiginoue

ノーベル文学賞を逃した村上と受けた大江

 今回のノーベル文学賞は、日本の村上春樹と中国の莫言のどちらかが受賞するだろうと予想され、結果は莫言だった。この人の小説は読んでなくても映画化なら観たという人は日本に多いのではないか。映画化はたいへん好評だったから。
 ところで、受賞を逃した村上春樹だが、受賞している大江健三郎よりも日本では人気があるのではないか。
 いっぽう大江健三郎は、日本よりも、翻訳されて北欧諸国やロシアと旧ソ連の国々で出版された方が売れて来た。発行部数は桁違いだ。だから北欧でやっているノーベル賞に選ばれたのも、当然といえば当然だろう。
 さて、受賞した莫言は、社会的発言が進歩的のようでいて、しょせんは体制側であると批判する中国人がいるそうだが、これは大江健三郎も同様だ。そのなかでもっとも有名なのは、朝日新聞の記者だった本多勝一による批判だろう。
 しかし、その前から批判はあった。大江健三郎の『飼育』を映画化した大島渚と同様に、日本の「進歩的文化人」は見せかけだけと批判されている。この二人については音楽家の高橋悠治も指摘していた。
 ただし、高橋悠治の批判は、大江や大島が、売り出すときに進歩的な発言で目立ち、後に保守化した時勢に迎合して転向したとの趣旨だった。
 それとは違い、本多勝一の大江健三郎批判は、大江が姑息な処世術で八方美人をしているという趣旨だった。それも、もとは批判ではなかった。
 しがらみがあって言いたいことも言えない言論出版の問題として、本多が大江に意見を伺いたいと頼んだところ、大江から漠然とした返答があり、芥川賞の選考委員を辞任したのは、賞に関わっている文芸春秋社に右翼過ぎる者がいて、その人が社内で昇進して不愉快だったからだと言う。
 なのに、それを公言しようとしないのだから、やはり大江は商売への差し障りを気にしているのだろうと本多は指摘したのだった。
 そのあと、大江が朝日新聞に短期連載した随筆の中でこの件に触れ、本多に「転向」したと批判されたと書いた。転向したなら八方美人ではない。曲解に基づいた記述であるから訂正しろと本多は求めたけれと、大江はあやふやな態度に終始して、それでいて、本多に批判されてしまったということだけは、愚痴めいた調子で書いた。それからというもの、本多は怒ってしまい大江に対する批判がきつくなった。
 おそらく、大江は高橋から受けたのと同じ批判をされたと思い込んだのではないか。昔からさんざん批判されてきたので、また同じだと早とちりしたのではないか。
 とにかく、今回受賞した中国の莫言については、もう少し中国の事情を調べてからでないと、何とも言えないだろう。
 

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by ruhiginoue | 2012-10-15 18:29 | 文学