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井上靜に関するblog(網誌)です。下記の著書を読んでもらえたら嬉しく存じます。


by ruhiginoue

「美味しんぼ」の鼻血は何も問題がない

 『美味しんぼ』で、福島へ調査に行ったら鼻血が出たという場面があり、そこにいる人たちには、そういうことがよくあるという話を取材に基づいて紹介したところ、非難する人たちがいる。
 この話について、諸説あることは先日に述べたとおりだが、そもそもこの漫画は劇作品であることを忘れてはいけない。物語のなかで、汚染地域にいると鼻血が出た事実があって、それについて医師に相談すると、汚染の程度と他の症状と併せて考えれば原因とは言えないと回答される場面もある。
 そして、事実は確かにあり、その原因は他にあるかもしれず、何か間接的な影響なのかもしれない、というように登場人物たちが真実を探求していく過程が描かれている物語である。
 
 これで思い出すのが、『橋のない川』の映画化のさいに苦情があったことだ。
 この小説は差別の問題を正面から取り上げた歴史小説だが、この映画化のさい、差別を受けた当事者として撤廃の運動をしている人たちに相談したところ、差別されて泣く人の場面に文句をつけ、ここは威勢よく抗議するように描かないと駄目だと言い出した。
 しかしこれは、差別された人が、最初は訳が分からず泣いていたけれど、その後に差別の理不尽さ不当さに気づき、毅然とするようになるという物語だ。そう説明しなければならなかった。
 なんでこんなことを説明しないといけないのかと、監督などは思ったそうだが、現実にある題材を取り上げると、物語に描かれることを、途中のことまで結論と受け取ってしまう人がいる、というわけだ。
 
 提示された事実と、それについて考える過程は、結論ではないし、物語は結論を訴えて同意を求めるものではなく、真実を追及する人の生き方に共感を求めるものだ。
 
 
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by ruhiginoue | 2014-04-30 22:41 | 社会