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by ruhiginoue

鶴見俊輔氏と山上たつひこ「がきデカ」と「光る風」

 亡くなった鶴見俊輔氏は、今また国立競技場での発言が話題の森喜朗もと総理の在任中にギャグマンガ「がきデカ」主人公みたいだと皮肉っていた。また、もともとこのマンガの大ファンだとも言っていた。まわりからは、そんな下品なギャグ漫画を読んでると呆れられたが、ほんとに面白いと言ってた。
 
 この「がきデカ」が大ヒットする前の1970年に、作者の山上たつひこ氏は、近未来SFポリティカルサスペンス「光る風」を発表していた。これは70年代半ばから急速に軍国主義が復活する日本を舞台に、兵器工場の爆発事故の後に産まれる奇形児たち、アメリカの要請による海外派兵、対米従属を本格化させるために強行される基地工事、反政府デモに容赦なく発砲する機動隊、大地震で崩壊する都市と災害に便乗する権力、などが描かれる。

 こんなシリアスなマンガの後にナンセンスギャグで大ヒットさせたので、その意外性が話題だったし、「がきデカ」が有名なので先に知り、あとから「光る風」を知って驚いた人もいる。
 また、作者は権力から睨まれて洗脳されたのではないかとまで言われたけれど、「光る風」も筋はシリアスな内容だが、残酷な権力の描写は笑うに笑えないギャグともいうべきだから、そのあと「がきデカ」の少年警官こまわり君の名ギャグ「死刑」とも共通していると解釈できる。

 『光る風』は少年マンガで、主人公は高校生だ。彼は、防衛大を出た兄が軍事介入で東南アジアに行くのを止めて叫ぶ。
 「俺たちの世代は誤ちを許されないんだ!なぜならーこれと全く同じ誤ちを既に過去に我々の親父やおじいさんが犯しているからだ!前例がありながらそれと同じ誤ちを繰り返すなんて人間のすることじゃない!」
 しかし、親と大衆から迫害され、負傷してしまう。
 別の場面では、主人公に行きずりの年長の男が、こう言う。
 「こんなめちゃくちゃな世の中になった今、何もこっちから騒動の渦に飛び込んでいく必要もないからな。世の中の揉め事なんてのは、いってみりゃ周期的な祭りみたいなもんでな、行くとこまで行きゃいい。そうすりゃ自然に収まるってもんよ」
 反発する主人公。
「『周期的な祭りみたいなもん』だと⁈誤ちが繰り返されなきゃならない理由なんて1つもないよ。そう思い込んでるだけさ」
 それで男は言う。
 「わかるよ、お前さんの言いたい事は。だがな、多くの俺みたいに無力な人間たちにとって、そう思うことが自分自身に対しての一種の慰めになることだってあるんだ」

 今、改めて読んで、この情勢と重なることがあるので薄ら寒くなったと言う人がいるし、だから出版社も今年になって再版し、解説を内田樹氏が書いているというわけだろう。
 
 この機会に買って読み返してみた。
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by ruhiginoue | 2015-07-24 10:05 | 社会