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井上靜に関するblog(網誌)です。下記の著書を読んでもらえたら嬉しく存じます。


by ruhiginoue

金八先生のモデル三上満さんが死去

 デレビドラマの金八先生のモデルといわれる三上満さんがガンのため83歳で亡くなったそうだ。
 この三上さんは、かつて都知事選挙で石原や舛添といった候補らに対抗して共産党が担ぎ出したことで話題になったが、もとは金八先生のような下町の中学の名物教師だった。定年退職してからは、三十年間の教員体験をもとに少年非行対策など教育関係の著書を何冊も出したので「教育評論家」と呼ばれた。
 この著書を、脚本家の小山内美恵子が『3年B組金八先生』の作劇をするさい参考とにして、中にはほとんど頂戴してしまったこともあり、だから三上さんは金八先生のモデルの一人だと小山内さんが言っていた。

 三上満さんは「みかみ みつる」だが「みかみ まん」という通称で、これを略して「みかまん」というあだ名となり、下町の中学校で生徒から「みかまんさん」と呼ばれていたそうだ。ちょうど金八先生が「きんぱっつあん」と呼ばれていたように。
 温和な性格だが熱血漢でもある三上さんは、生徒から人気があったようで、知事選挙のときも「三上先生か、あの人は熱心だったな」とか「ミカマンさんには世話になった」とか、卒業生など地元出身の人たちが言っていた。
 そして引退してからも非行問題などで相談に乗ってたということだった。

 いっぽうで労働運動家であった三上さんは、日教組を批判して別の組合を作るなどの活動で、中心的な役割を果たした。それで共産党から都知事選挙に担ぎ出されると、都の教育環境改善を訴え、「都庁ピカピカ校舎ボロボロ」と鈴木都政を批判していた。

 ドラマの金八先生は、演じる武田鉄矢が中退した大学を卒業した設定にしていて、これがセリフにも反映していたが、モデルの三上満さんは東大出だった。彼の訃報を共産党の機関誌しんぶん赤旗が大きく取り上げ、二十代のとき入党してからずっと党籍をもっていたと報じている。
 こうした優等生の左翼は落ちこぼれに冷淡な傾向があるけれど、三上さんは違った。それは、下町の中学校の教師になり、ドラマに描かれている桜中学校の背景にある貧富の差などを、政治的に左寄りであるため、社会の矛盾として批判的に見ていたからだ。

 それで三上さんは、非行に走る子供や、親に受験勉強ばかりさせられノイローゼになる子供などを、社会の歪みの犠牲者として捉えていた。だから問題児を排除の対象にしてはならぬと説き、少年非行問題に熱心に取り組む下町の中学校の名物教師となったのだった。
 そこからドラマが作られ、金八先生の「腐ったミカンを箱から放り出せという発想ではダメだ」というセリフになったりしたわけだ。

 そして都知事選挙の時にも、訃報のときも、金八先生のモデルということが驚かれたり強調されたりしたけれど、それというのも、ドラマが人気が出たさい、よく、学校の教師が「あんなのはドラマだけだ」「あんな先生はいない」と言い、これを生徒たちは不熱心な教師の言い訳と受け止め反発する、ということが、よくあったからだ。このことは、放送が始まって人気が出はじめたあたりから、テレビでも取り上げられていた。
 だから、モデルの存在が驚かれたわけだ。

 また、金八先生にふんして当たり役になった武田鉄矢が、自分は金八先生のようにリベラルではないと釈明していたけれど、これを、ドラマの中で金八先生が平和憲法の意義を説いたり、高校に進学しないで就職する生徒の一人が自衛隊に入ることを金八先生が思いとどまらせたりしたことと結びつける人も多いが、これはシリーズの後の方になってからのことで、あくまで作者の主張や問題提起だった。

 むしろ金八先生の本当のリベラルさは、非行対策への姿勢であり、これがモデルの三上さんの反映であった。つまり、自衛隊に入ることを快く思わないだけなら左よりの人には珍しくないが、左よりであるから問題児を排除せずに根気よく取り組むというのは、いわゆるレアケースであったはずだ。
 それで三上満さんは注目されたのだろう。



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by ruhiginoue | 2015-08-23 16:20 | 社会