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井上靜に関するblog(網誌)です。下記の著書を読んでもらえたら嬉しく存じます。


by ruhiginoue

「あの時代は合法だった」とよく言われる話

 例えば従軍慰安婦という性奴隷制度について、政治家が「あの時代は合法だった」と言っては問題になるが、それでも繰り返している。また舌禍事件で「誤解を招いた」と弁解していた。では真意はなんだったのかという話になる。

 これは、政治家が勝手に放言しているだけではない。合法という判断は司法の場で行うものだが、例えばドイツでは、ナチス政権下に親衛隊が拳銃で撃ったとかいうのではなく裁判で、政府を言論で批判したことが反逆罪とされ死刑になった人たちがいるけれど、これについて、戦後にドイツの連邦裁判所は、当時の法律に則り適正な手続きをとってのことだから合法であり、裁判官ら司法関係者に人道的責任はないと公式に表明している。
 だから、ナチを批判するビラをまいて死罪となったショル兄妹ら「白バラ」の人たちについても、合法であったとされ、これについては旧映画化『白バラは死なず』の最後にも、字幕で説明が批判的にでる。

 こういうことがあるから、イスラエルの諜報機関モサドは、主権侵害を承知の上で南米に逃亡していたナチの高官アドルフ アイヒマンを拉致し、イスラエルに連れてきて戦犯法廷にかけた。
 すると、やはりアイヒマンは、ホロコーストとよばれるユダヤ人虐殺の総責任者だったことについて、自分は公務員だったので公務を忠実に執行したにすぎず合法的であり、違法性があったとしても個人責任はないと主張した。
 それでも彼は有罪とされ死刑になったが、そもそも国内で裁くことに困難があるから、イスラエルもこのようなことをしたのだ。だからイスラエルが戦争で大量虐殺してきたことにしても、イスラエルでは合法なのだ。

 まえに、国家賠償訴訟で被告に含めた者が、公務だったので個人責任はないと抗弁したので、アイヒマンの写真を書証とし証拠説明書に「立証趣旨 被告の抗弁はナチ戦犯アイヒマンと同じであること」と記載して提出したら、裁判官が「これは立証ではなく皮肉だから受理できない」と言い、「逃げないで受け取れ」と法廷で押し問答になったことがある。
 そしていちおう参考ということで受け取り、被告に渡されたが、裁判には影響せず、しかし受け取った被告は不快感を露わにしていた。もちろんそれが目的であった。

 そういうことだから、人道に対する罪は、外国からとやかく言われる筋合いがないと言って避けていてはダメなのだ。外部から口出しすることが不適切である場合もあると同時に、外部からのチェックが必要な場合もある、というのこと同じことだ。


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by ruhiginoue | 2016-01-21 05:27 | 政治