ノシャップ岬と基地
2016年 10月 08日
宗谷の増幌橋の近くにあるバス停で待っていてもバスが来ない。すると通りかかった車が止まって乗せてくれた。しばらく走ったらバスが追い抜いて行った。バスは遅れていたようだ。
しかし相当の距離があるのでバス代は千円くらいになる。昼飯代にすればいいと、乗せてくれた男性が言った。ややゆっくり走っているのは、交通取り締まりをしているから警戒しているということだった。
その男性は昭和二十年代の生まれだと言う。これから稚内に仕事で行くが、かつてほど漁業の賑わいがないと言う。
「五十年も経てば変わるさ」とのことだ。
稚内に着くと、たくさんの照明を吊り下げたイカ釣り船が日本各地から来ていた。石川など遠方からの船も停泊している。
海産物店は、いちおう活気がある。それでも昔ほどの盛況ではないと言われてみると、たしかに感じるものがある。
それでもカニとイカは美味かった。
これで思い出すのだが、小さいころに想像で描いた海の絵では、タコもカニもみんな生きているのに赤く塗っていた。まるで「クレクレタコラ」であった。
稚内のスーパーマーケットにはロシア語の表記がしてある。
ロシアの漁船から乗組員が来ると、買い物するのは良いが、銭湯の経営者はよく頭にくると言う。長い間に渡り入浴していないうえ魚の臭いや鱗だらけだから、洗う湯を普通の入浴客より大量に使うので割増料金を取りたいほどで、そのうえ飲酒しての入浴は危険だからダメだとどこの公衆浴場でも表示してあるが、そんなことロシアの漁夫はお構いなしだという。
ノシャップ岬の方へ行くと、よく鹿を見かける。野生の鹿なんて北海道の人は見慣れていると言う。道路に「シカ注意」の表示があり、堂々と道路を渡る鹿を自動車が待っている。そして公園で堂々としている。近寄ったり餌をやったりしないよう注意書きが表示してあり、奈良の鹿とは大違いだ。
ノシャップ岬とその灯台では、やはり観光客が集団で来ていたが、強風のため、みんな大急ぎで記念写真を撮影して退散して行った。
遠く海を眺める。やや波が荒い。
83年の大韓航空機007便事件の直後は、捜索が来ていたと地元の人に聴いた。また、何か光ったのを目撃した人もいると言う。ミサイルによる爆発か、その前に発射した警告の曳光弾かは、わからないそうだ。
アメリカは、ソ連軍が民間機を撃墜したと非難し、ソ連は軍事基地の上空に民間機が侵入するわけがないからスパイ機だと非難した。「007便」とはシャレにならないとも言われた。
後に隠されていた事実が判明した。あの時、アメリカ軍の偵察機がソ連軍基地の上空に侵入し、そこへ来た大韓機が間違えられて攻撃されたのだった。冷戦の犠牲ということだが、なにより気の毒なのは乗客たちであった。
拳銃と覚醒剤の密輸入を発見したら110番という旗が強風にバタバタと音をたてている。
これも、直接見たかったものだ。自衛隊の稚内分屯地。
ここはもともと漁業しかないような所で、かつての賑わいではない。高い山が無くてスキーやスノボの客は来ないから、あとは流氷見物で、しかし冬の気候は厳しい。
そして就職には公務員ということになるが役所の仕事は多くない。そして自衛隊ということになるから、バスの中でも入隊案内のアナウンスが必ず流れる。
by ruhiginoue
| 2016-10-08 15:36
| 自然