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by ruhiginoue

共謀罪を批判する朝日新聞の不整合

 「政府を、捜査機関を信用しなさい」「犯罪とは無縁の一般人は心配しなくていい」とただ繰り返しても、受け入れられるはずがない。

 これは朝日新聞5月12日の社説『共謀罪』審議 採決ありきは許されぬ」である。まったく正しい。大賛成である。
 しかし朝日新聞の最近の他の記事と整合性を欠いている。ほかの記事では逆のことを主張していた。以下、その4月18日の記事から引用。

 「俺じゃない!」 13日時45分ごろ、車内で女子中学生ら2人の胸や下着を触ったとして駅で降ろされた男性は、こう叫んで線路に飛び降り、走って逃げた。電車は約14分間、運転を見合わせた。都内では3月中旬以降、同様の事案が少なくとも6件起きている。 
 なぜ線路に逃げるのだろうか。鉄道営業法では、正当な理由なく線路に立ち入ることを禁じている。警察は都迷惑防止条例違反(痴漢)に加え、鉄道営業法違反の疑いも視野に捜査している。ある署の幹部は「線路から敷地外に出られる付近の防犯カメラを洗い、検挙する」と話す。
 一連の「逃走劇」には、鉄道会社も頭を抱えている。上野駅で、痴漢を指摘された人が線路に飛び降り、電車にはねられて死亡する事故が起きた。JR東日本によると、線路上に人が立ち入った場合は安全を最優先し、駅員らが人がいないことを目視で確認できた段階で運転を再開する。万が一の見落としも想定し、再開直後は徐行で運転するという。
 地下鉄の場合、さらに危険性が増す。東京メトロによると、線路脇に送電線が引かれている路線では、感電の恐れがある。送電線の電圧は600ボルト。人が立ち入ると電気を止める作業も必要になる。担当者は「地下鉄はトンネルなので、逃げても次の駅まで出られません」と予防線を張る。
 大阪市では12年、市営地下鉄御堂筋線で線路に降りて約1キロ逃げた男が駅員らに取り押さえられた。
 線路に逃げた人たちが、本当に痴漢をしたのかどうかは定かではない。痴漢をめぐっては、ネット上で「被害を申告した人と一緒に駅事務室に行くと現行犯逮捕される」といった内容や、冤罪(えんざい)を避けるために疑われたら逃げることを推奨する書き込みもある。
 これらについて、警視庁の捜査幹部は「申告があれば何でも逮捕するわけじゃない」。申告内容や第三者の目撃の有無などを検討してから判断する、としている。
 もし疑いをかけられたらどう対処すればいいのか。冤罪事件に詳しい立教大の荒木伸怡(のぶよし)名誉教授(73)は「やっていないならはっきり主張し、その場から動かずに弁護士を呼ぶことだ」。線路に降りる行為はやめた方が良いと言う。「業務妨害に問われる可能性があり、鉄道会社から損害賠償を請求される恐れもある」と指摘している。
 
 以上引用。
 この記事には、裁判がデタラメで信用できず、そんなもののために一生を棒に振るから命がけで逃げるのに、そうした司法の問題にまったく触れず、脅すばかりの法律家の話とともに、警察の言い分だけ一方的に紹介している。これでは共謀罪の強行する側が、「捜査機関を信用しろ」「一般人は関係ない」と同じである。

 もともと朝日新聞は、冤罪に対しては読売新聞より権力寄りなのは昔からずっと。
 かつて本多勝一記者が「あるスピード違反」という記事を書き、これは裁判所が警察の一方的な言い分を鵜呑みにするので捕まったら最後の「暗黒裁判」であるという実態を告発したものだった。
 すると、他にも酷い冤罪があるので取り上げてほしいという手紙が大量に来たそうだ。本多記者は周知のとおり司法が専門ではない。だから要望に応えられなかったというが、それなら大量の要望があるのだから新聞として力を入れてもよいはずだ。
 ところがそうはなならない、それどころか逆である。具体例は前にもここで挙げている通りだ。そうしたら、またこんな記事である。映画『それでもボクはやっない』の周防監督も、その時の経験で知った司法の問題から共謀罪を批判しているというのに。
 こんな批判精神も問題意識も無い記事の一方で、社説で国会審議についていちおう批判する。ここに朝日新聞の堕落がある。

 追記
 弁護士など他の専門家たちは、「駅の事務室に連れていかれると、職員に取り押さえられたとの解釈で後から来た警察に現行犯逮捕とされてしまうから、その場で毅然として潔白を主張して立ち去り、自分で言うだけでは相手が納得しないなら弁護士を呼ぶと言うべきだ」と説いている。
 この記事に出てくる「冤罪に詳しい」立教大名誉教授も「その場から動かずに」と述べているので、その前にある「被害を申告した人と一緒に駅事務室に行くと現行犯逮捕される」について、だから行くなという意味で言ったのに朝日新聞の記事ではその説明が欠落して単にネット上の風説であるかのようになっていた可能性がある。

 
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Commented by 結城水葉 at 2017-05-15 08:51 x
私は死刑にも共謀罪にも反対です
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by ruhiginoue | 2017-05-12 17:55 | 司法 | Comments(1)