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井上靜に関するblog(網誌)です。下記の著書を読んでもらえたら嬉しく存じます。


by ruhiginoue

野中広務は『カムイ伝』の横目

 死去した野中広務について、死んだからと美化されすぎだという指摘がある。
 晩年の彼は、自らの体験から戦争と差別を忌み嫌う言動をしていたけれど、そればかりに注目して、彼が政治家として何をしてきたかを無視しているというわけだ。
 たしかに野中広務という政治家は、差別される地域の出身であったため、差別のない社会にすることが政治家としての第一の目標であると言っていたし、世代的に戦争に駆り出されそうなギリギリであったから戦争が少し長引いていたら死んでいたと言い、戦争を批判して平和憲法を変えてはならないと説いていた。

 しかし、政治家を引退する前の彼は自民党の中枢で国家主義的な政策を推進してきた。
 実際に彼が「影の総理」とまでいわれるほど自民党内で実力者だった絶頂期に、国旗国歌法、盗聴法、周辺事態法が成立しているし、自民党と公明党が連立を組んださいも彼は主導的立場であった。
 このあたりは政治に詳しい人たちがすでに色々と指摘しているので、これ以上の説明はするまでもないだろう。

 ただ美輪明宏にみられるとおり、反戦や反差別への想いが自らの体験に基づいているものだから本物だとしても、根性がファシストである人は珍しくない。
 長崎で被爆し、同性愛者で、それゆえ戦争を批判し差別を憎む言動は本心であること疑いようもないが、オカルト主義者の自称霊能者で、226事件の将校の霊が背後にいると言って三島由紀夫に狂気の行動を焚き付けたり、問答無用の強権だけが社会の秩序を保てるのだからお上に逆らう者は子供でも情け容赦なく皆殺しにしてやるべきだと言ったり。
 これは、どんなに体験による影響があっても生まれつきの性格は変わらず、それによって矛盾が生じても気づかない、ということだろう。

 あと、野中広務という人については、性格的なことに加えて社会の中にみられる構造的な問題でもあり、これを劇画『カムイ伝』の横目みたいだという指摘もある。出自が虐げられている側であっても否むしろそうであるから権力側に付く人がいるもので、昔からそんな人によって支配が補完されている、ということだ。
野中広務は『カムイ伝』の横目_f0133526_20232392.jpg

 そして横目は「よくも私の支配を破ったな」と斬りかかるがカムイの霞切りに返り討ちとなり瀕死の重傷を負う。
 しかし野中広務は加藤らの反乱を切り崩しで失敗させたのだ。




by ruhiginoue | 2018-01-30 12:49 | 政治