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by ruhiginoue

目糞の百田尚樹が鼻糞の江川紹子を嗤う

 以下、文中敬称略

 百田尚樹がTwitterで、オウム真理教事件の坂本弁護士殺害は江川紹子がきっかけを作ったのであり、その後、江川紹子はこの事件で有田芳生と同様にテレビに出演して稼いだ、という趣旨の発言をし、これに対して、坂本を殺害したのはオウム教の狂信的な信者であったのだから、江川のせいで殺されたのではないという批判が起きた。

 これについての客観的事実は次のようになる。

 まず、オウム教の問題で坂本弁護士に相談がもちかけられたのは、江川紹子が話を持って行ったからであり、これは江川が認めている。テレビに出演したときも言っていた。だから江川は坂本が事件に巻き込まれるきっかけではあった。
 しかし、あくまで坂本を殺害した犯人はオウム教の信者であり、その犯行動機とは、坂本がテレビの取材を受けてオウム教を非難したからであった。これは実行犯であるオウム教の信者らも認めている。
 また、オウム教を批判している人たちは他にもいたが、坂本弁護士の場合は他の人たちと少々違い法律家としての見地から厳しい指摘をしていた。オウム教が資金集めのために行っている事業の中で詐欺になる行為をしている実態を、同弁護士は自ら調査したうえで具体的に明らかにしていたのだった。

 そして、このときのインタビューが放送されていないのに、この収録をしたTBSが、オウム教の関係者からその内容を問われると、なんとインタビューの録画を勝手に見せてしまった。しかも坂本弁護士には無断であった。放送されていれば口封じという発想にはならないが、放送されていないから世間に知られていない。
 そして坂本は、インタビューがまだ放送されていないのでオウム教がどういう反応か解らなかったし、まさかインタビューの内容がオウム側に漏れているとは想像もしていなかった。ところが、そのときすでにオウム教は坂本に危機感を持ち敵意を抱いていた。
 この結果、坂本はまさに不意打ちの形で襲撃を受けてしまい、妻子とともに自宅で殺害されてしまう。
 それで、坂本の遺族は記者会見の時に先ず「TBSはお断りです。出て行ってください」と言ったのだ。この怒りはもっともだろう。

 また、警察の対応も批判された。坂本弁護士一家が行方不明になって騒がれても、警察はのらりくらりとした対応で、しかもこの現場は神奈川県であり、当時、神奈川県警といえば不祥事連発でマスコミにも大きくとりあげられていたほどだった。
 そのうえ神奈川県警は共産党の緒方議員宅盗聴事件も起こしていて、このとき緒方議員の代理人を受任していたのが坂本弁護士の所属している横浜法律事務所だったから、直接敵対する関係であった。こういうことも影響したと当時から指摘されていた。

 こうして事実を確認すると、坂本弁護士殺害事件について江川紹子の責任という話は成立しないから、なのにわざわざ話の中に持ち出した百田の行為は、江川への批判ではなく嫌がらせと言うべきだ。

 ただ、当時、萩原健一のヒット曲『大阪で生まれた女』を替え歌して「♪オウム騒動で~売れた~女や~」とテレビで皮肉っている芸人もいたように、オウム真理教事件によって江川紹子が頻繁にテレビ出演していたことは事実であるし、このとき出演するたびに着る物が高価そうになるから、テレビのギャラは良い額なのだろうと巷で話題となっていた。
 また、江川紹子はテレビに出ているとき、坂本弁護士を巻き込んでしまったと言って嘆いたが、これは自分が事件で売れたことに対するうしろめたさがあったのではないかと多くの視聴者から言われていたし、そこで江川が号泣したのが唐突だったから、空々しいとか、あれはそうして見せるパフォーマンスだろうとか言われ、女子高生たちは「ウソ泣きオバサン江川紹子」と言っていたものだ。
 このようなことがあったから、百田尚樹を批判する人がいる一方で、「しかしオウム教事件で坂本弁護士は殺され江川紹子は稼いでいた」という部分は事実だと言う人たちもいるのだ。

 しかし、ほんとうに問題なのは次のことだ。
 元信者で、もうオウム教とは関係なくなった人とか、それ以上に元々関係ない信者の子供とか、そういう人たちまで偏見や差別を受けた事実がある。
 これについて人権問題と認識し、子供が就学拒否されたら行政に抗議する、などの活動をしていた人たちがいた。そのうち山際永三(演出家・映画監督)は、テレビの姿勢を問題にしていた。オウム教事件が官憲に追及されるようになったからと安心して叩く者がいて、それだけにとどまらず、そこで権力に便乗した言動をすることで偉そうにする。こうしてマスメディア特にテレビは偏見と差別を煽り、なかでも有田芳生と江川紹子の態度はまさに「虎の威を借る狐」というべきひどいものだ。このように批判していた。

 また、それまでさんざん教団の迷惑行為を放置して地元住民の苦情など無視していた警察が、霞が関を標的にされたら教団を強制捜査し、そのさい信者をかたっぱしから逮捕して取り調べるために、どうでもいいようなことを口実にする「微罪別件逮捕」をしていることが問題になった。
 これでは、オウム教事件を利用して、権力の濫用の前例にされそうだと危惧する声が上がった。取り調べのための別件逮捕だけでも違法であり冤罪の温床だが、しかも微罪というのが冊子やチラシを束ねているのをほどくためのに持っていた文具のカッターナイフで「銃刀法違反」だと逮捕してしまうことまであった。
 しかも、民族主義団体の顧問で予備校講師・評論家の鈴木邦男が、こう指摘した。カッターナイフを持っていたのを銃刀法違反で逮捕なんてことは、自分や仲間が政治活動をしている中でざらにあったことである。前例どころかすでに常套手段であり、これを批判せずに見逃してはならないと警告していた。
 ところが江川紹子は「この事件には~やっても仕方ないと思いますう~」とテレビに出て言い放ったのだ。この人はすべてがこの調子であった。それも官憲と一体化していちいち上から目線で、山際永三が指摘したとおり「虎の威を借る狐」であった。

 ところが、こういうことを百田尚樹は批判しない。自分も権力にすり寄って「虎の威を借りる狐」の商売をしているから当然だろう。だから、江川紹子に対して批判ではなく嫌味の悪口しか言わないのだ。
 また、例の「W吉田」で朝日新聞が権力に迫害され窮地に立ったとき、そこへ付け込んで非難したことも、百田尚樹と江川紹子は共通している。このことは拙書『朝日新聞の逆襲』(第三書館)で述べたとおりだから詳しくは省略するが、「虎の威を借る狐」であると同時に「同じ穴の狢」でもあるのだ。

 つまり、百田尚樹と江川紹子どちらも糞である。「目糞が鼻糞を嗤う」とは、まさにこのことである。



 



by ruhiginoue | 2018-02-22 13:50 | 社会