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井上靜に関するblog(網誌)です。下記の著書を読んでもらえたら嬉しく存じます。


by ruhiginoue

心霊と極右は実に相性が良い

 『新潮45』の編集長は、前に『ムー』の編集部にいたから、ネトウヨ路線はあくまで会社の指示であって編集長の意思ではなかったはずだという人たちがいるけれど、実際に社内でどうなっていたかは外部からだと不明だが、そもそもオカルトとか心霊とかいうものは保守や極右との親和性が高いものだ。他にも『たま』とか『メビウス』など同種の雑誌があって『ムー』より極右路線だった。

 それにしても、心霊というものが日本は特にひどい。前に、テレビで丹波哲郎が霊能者を紹介する番組があったけれど、そこで彼が対談した女性の霊能者は、岸総理に相談されて大丈夫だと押したことを誇っていた。それで自信をもった岸総理は安保を強行して死傷者まで出した。
 また、同番組では、癌など難病は悪霊の仕業なので追い払って治せるという霊能者を紹介し、それ以来、その霊能者が主催している団体には問い合わせが殺到して、相談の予約をしても一か月以上待たされるほどになった。最初は料金など取らないと公言してたのに、会の規模が大きくなると巨大な建物を建設して維持費がかかったりするようになって、高額な相談料を取るようになった。それで「除霊」「浄霊」「心霊(神霊)治療」したのに治らず死亡する人が出て、騙された詐欺に遭ったという人たちの「被害者の会」までできる始末。
 これらの「霊能者」たちは皆、私生活で不幸に見舞われていて、天罰だと言われたものだ。そうでなくても、心霊により災いを除くことを説いていたけれど、自らはダメだったことが証明されたことだけは確かだ。

 それに、心霊という考え方からしても、日本の霊能者は不純な発想ばかりしている。
 その「被害者の会」までできた団体の会長は、人に恨みや呪いをかけると、相手の霊的な力の方が強い場合は負けて自分が災いを受けてしまうと説き、実際に彼が呪った相手は災難に見舞われ、逆に彼を呪った者は呪いの念が跳ね返されて災難に見舞われたという話をすることで、自分は強いからいいが、お前たちはやめておけという説教をしていた。
 しかし、心霊で世界的に最も有名なシルバーバーチというアメリカ先住民の口を借りたという教えでは、憎しみや呪いの想いを人に向けていると、自らの霊格が低下して低級霊と波長が合ってしまい、自分が不幸や災難に見舞われるというものだ。これなら、勝てばいいが負けたらやばいからやめておけというのと違って、自らを向上させないといけないという健全な発想だ。
 ただ、どちらにしても、「人を呪わば穴二つ」という戒めとして言うなら、まだ仕方ないとも言える。

 ところが、戒めだから仕方ないでは済まないのが、歌手で自称霊能者の美輪明宏である。彼は、人に優しくすれば木霊のように自分にも跳ね返ってきて優しくしてもらえると説いていた。これもシルバーバーチでは違い、人に優しくすれば、自分が向上するということだ。「情けは人の為ならず」という諺も、人に情けをかけると人格が向上するという意味において自分の為になると解釈できるが、そうではなく見返りが期待できるので情けをかけるというのでは発想が卑しい。
 これは、世間一般の感覚に照らしても、同じだろう。

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 このように、日本の心霊というものは自らの向上という発想ではなく、力関係と損得勘定が混じったものである。もともと日本では、子供のしつけでも倫理ではなく「先生に言いつけますよ」「お巡りさんが来ますよ」であるから、当然だろう。だから道徳を教科にして評価をつけたりするのだ。
 これだから、美輪明宏も親しくしていた三島由紀夫に「二・二六事件の将校の霊が背後にいるのが見える」と言って、あの狂気の行動をけしかけたし、長崎出身の被爆者だからと戦争は批判しても、他のことでは、社会の秩序を乱す者は未成年者であっても権力によって殺して見せしめにしろと言うなどファシストむき出しである。これと同じことは、先の「被害者の会」ができた団体の「霊能者」も説いていた。

 こうしてみると、『ムー』から来た編集長が『新潮45』で極右的かつナチズム的な差別を煽動したとしても、もともと親和性があるのだから別段不自然なことではない。その原因は、自らの向上という発想を欠いた日本文化の貧困であり、これには絶望するしかない。







by ruhiginoue | 2018-09-30 13:34 | 政治