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by ruhiginoue

西谷文和氏の話から思う日本人の甘さ

 中東をよく取材している西谷文和氏の話から、日本人の甘さを感じる。
 そして、あの安田純平という人も、なんであのように変な取材レポートをし、これを日本人の多くが受け容れるのか理解できる気がする。

 まず西谷氏が述べるシリア情勢であるが、それによると、アサド大統領も周囲の軍人らも、地元にある次のような喩え話の論理であり、それが原因なのだそうだ。
 昔ある老人が、食用の七面鳥を盗まれた。これは忌々しきことだと老人は言ったが、息子たちは七面鳥くらいいいじゃないかと軽く見ていた。
 すると、さらに馬や駱駝など大きな家畜が盗まれ、挙句に娘が襲われてレイプされる事件まで起きてしまう。
 その間ずっと、老人は七面鳥を盗まれたことにこだわっていた。七面鳥くらいまあいいかと言っていたら、あいつからは安心して盗めるぞと思われてしまったのだと。
 この言い伝えの発想だから、もともと宗教対立があったところへ反政府デモが起きると、シリア政府の取り締まりは徹底的に厳しく、死傷者が出ようと一切妥協しなかった。ここから内戦に発展して悲惨なことになったと指摘する西谷氏は、あのときアサド大統領が話し合いをしていれば、このような悲惨な内戦にはならなかったと結論する。

 しかし、日本の国会議事堂前で行われる政府批判のデモや集会と、中近東の厳しい宗教対立を背景にしたデモや集会の修羅場とでは、緊張が大違いである。話し合いで解決どころか、もしも話し合いに応じる姿勢を見せていたら、七面鳥くらいと言うのと同じで、そこへ周辺諸国や欧米が早速に介入してきて、アサド大統領らはとっくに殺害されていただろう。
 そのうえ、国内が混乱して強権政治下より悪いことになる。ちょうどリビアのように。
 やや緊張が緩いというか単純な朝鮮半島でさえも、相手が日本だからここは穏便に話し合い懸案も解決しようと妥協したところへ、すかさずアメリカが介入してきて際どいことになり、金正日総書記が「不意打ち食らった」と言って自分の甘さを反省したほどである。
 
 なのに、危険な旅に何度も出たという武勇伝を落合信彦ばりに語る西谷氏でさえこれだから、安田氏の単純で薄っぺらいレポートが日本で受け容れられてしまうのは、日本のテレビ局が欧米寄り報道を求めている(あるいは強いられている)ためだけではなく、日本人の甘さによっていると考えられる。
 この甘さに白人コンプレックスが融合して「民主主義の欧米では報道の大切さが認識されているのでジャーナリストをバッシングしない」などと言わせる。アメリカに媚びて庶民を苦しめる自民党政権を批判している人たちまでが、この妄想の滑稽さに気づかない。

 ただ、これは日本人がおっとりした民族であるため平和ボケしているということではなく、日本人は普段から「なんでも話し合いで解決するべきだし、それは可能なことだ」という心にもないことを平気で言っている嘘つき民族だということだ。
 もともと日本人は、上辺は甘いお人よしだけれど実は非情で汚く、ここは穏便にと言っておいて、それでは誠実に応じましょうという態度を相手が見せると途端に露骨な手のひら返しをするものだ。
 これを、日本人はいつもやっているのに自覚していないから、他国のことだと「話し合いで解決しないから悪い」と言い、自国のことになると「話し合いで解決できるわけがない」と、なるのだ。

 
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Commented by at 2018-11-12 23:52 x
 西谷氏が述べるシリア情勢の解説は酷いですね。七面鳥の例えも??です。
『ジャスミンの残り香─「アラブの春」が変えたもの』によると”バシャールはデモが起きた初期には彼らに対して妥協的な態度を取り幾つかの譲歩をして鎮静を図った。初期のデモ隊は祈るような態度で大人しいものであったが、ここに腰の入った本気なグループが参加し、治安部隊の強行鎮圧を煽った。彼らは、デモの前面に子供たちを出してこの子供たちが警察にボコボコにされる絵を取って世界に配信すれば、子供が好きで好きでたまらない各国のムスリムの悲憤を誘発し、外国の介入を誘ってアサド政権を打倒できるのではと考えたのだ。で、彼らの願いは叶って外国の援助と介入で目出度く泥沼の内戦に突入した”と。
 木内みどり先生らがやっているラジオで西谷がパーソナリティをしているのを聞きましたが、”善人だけど見えてない”と思いましたね。結局のところ、外国の軍事介入を引っ張り込んでアサド政権打倒の内戦を引き起こす、そのためには自分の子供さえも殺すという硬い決意の皆さんが一方であり、軍事介入したくて侵略したくて死にそうな欧米と周辺国が並んでいるのですから、日本の「真面目」な(マトモとは言えないけど)ジャーナリストが”バシャールは極悪”と一方的に罵るのも馬鹿げた話です。アサド政権には可燃物はありましたが、火を着けたのはマジな皆さんであり、ナパームを注いで天を焦がすほどの炎を上げたのは邪な欧米と周辺国でした。内戦前は警察国家でネオリベとは言え、改革開放で金巡りが良くなってきていたので、一時のレバノン、イラク、リビア、ガザのように無茶苦茶に悪いわけではなかったのにねえ。
Commented by ruhiginoue at 2018-11-13 16:42
 ユダヤ系のハリウッド人による映画『バックトゥザフューチャー』に出てきたリビア人みたいな時代から路線変更して経済発展しているところへ付け込まれたのとシリアも同じでしょう。
 前にも述べたけど、中国が解放路線で経済発展という過程で天安門事件が起きたことをカダフィ氏はTBSのインタビューで指摘していたけど、それでいて自分では中国のようにできなかった。息子がやるつもりだったけど彼が甘かったのか。彼が大統領選挙に出て収めると言っていたけど内戦状態でそれどころではないようです。
 イラクのフセイン大統領もそうだけど、彼らは優秀ではあるけど中国人ほど政治に長けてはいなかった。やはり『アラビアのロレンス』の最後のように、近代政治の歴史が浅かったのが露呈しました。
 これと違い、やはり中国は政治の歴史が長いし、その影響を受けた北朝鮮も丁々発止と外交をしていて、日本よりは上手です。なんと百田尚樹がほざこうと、昔から『論語』『孫氏兵法』の国に対して昔から「徒然なるままに」「春はあけぼの」の国が勝てるわけありません。
 それが「戦場ジャーナリスト」の甘い認識にもつながっていると考えています。
Commented by at 2018-11-13 23:38 x
 戦国時代などの話を聞くと、「調略」と称して買収・寝返りの応酬で戦う前に勝敗が決したり、払いが悪いと付いて来なかったりとそれなりに孫子的であったようにも思います。

 変化は、葉隠れがどうちゃらとか水戸学がどうの、国学がどうの吉田松陰がどうのと、自分のご都合・欲望で現実を捻じ曲げ、手下と臣民を精神論と暴力で強引にドライブするようになってからでしょう。そうした複雑なもの、めんどくさいもの、理解しがたいもの、都合の悪いモノをまずそのまま受け止め受け入れるというところを、こまけえことはいいんだよとちゃぶ台ごとぶん投げて、これはこう言うこと!と偏見とご都合主義でまとめちゃう性向というのは、原発系が典型ですが戦後も引きずってるんじゃないか、彼らにも無意識にも影響してるんじゃないかと。
 西谷らは、ネトウヨのようにそうした感情とご都合に敗け、それと気づくことなくモノを見て論評しているように思います。彼らはいい人でしょうし、良い記事を書いたこともあったとは思いますが、物事が遥かにわかりやすい役所や地方紙で働き続けた方がもっと良かった気がしますね。
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by ruhiginoue | 2018-11-07 19:19 | 国際 | Trackback | Comments(3)