人気ブログランキング |

井上靜のblog(網誌)です。下記の著書を購入して支援を頂けたら助かります。下記の他は別人や海賊版なので買わないでください。アマゾンのコメント欄に嘘の書評が書いてあるのは過日倒産した出版社の宣伝です。この種の輩に対抗する意味でも何卒よろしくお願いいたします。品切れのさいはご容赦ください。


by ruhiginoue

京マチ子と『華麗なる一族』

 京マチ子が95歳で死去したそうだ。
 原節子も95歳まで生きていた。「美人薄命」とは限らないということだ。それはともかく、京マチ子は『羅生門』『雨月物語』『地獄門』など外国映画祭で受賞した時代劇映画で有名だが、実は『長崎の歌は忘れじ』など対米従属にもよく出ていた。長崎の被爆者の女性が米国人男性の愛によって原爆の恨みを捨てる話である。

 これを反戦映画だと勘違いした人も一部にいたらしいが、昔の批評を読んでも、平和を訴えるというより日米の戦後の友好を象徴した国際恋愛ドラマのような話だと受け取られていたことが判る。
 また、京マチ子の扮する被爆者の女性は長崎の原爆で失明までしているのに傷跡など悲惨な被害が無くて、その美貌にアメリカ人男性が惹かれるから、嘘臭いメロドラマどころかアメリカに媚びて戦争の被害を過少評価したものだという批判もあった。

 この映画のように、戦後アメリカ人の男性に日本人の女性が見初められるドラマは「らしゃめん映画」と呼ばれた。
 もともと、強国や宗主国の男性から見初められる弱小の従属国や植民地の女性、それをもって両国の友好、ということに仕立てハッピーエンドという話は、戦前は中国などを舞台にして製作されていた。逆に日本が宗主国であり、中国人女性には李香蘭こと山口淑子が扮していた。彼女も94歳没だった。やはり「美人薄命」ではない。

 ところで、戦時中にプロパガンダの国策映画を権力に命じられて意に反して作り悔いていた映画人が、戦後は民主や反戦の映画を作ったことは周知のとおりだ。
 その代表的な監督は山本薩夫と今井正である。彼らは左翼運動に関わって弾圧を受けた。しかし映画会社は「芸能界」だから就職できたということが多分にあった。そして両監督とも戦意高揚映画を撮ってウケていた。そこで原節子の出演作を何本も撮っている。

 そして、戦前から戦時中にかけて国策映画によく出ていた原節子は、戦後は黒澤明の『わが青春に悔いなし』、今井正の『青い山脈』に出た。山本薩夫や今井正と違って黒澤明は左翼ではなかったが、画家志望だった時にプロレタリア美術に関心を持ったため警察に後をつけられて逃げ回り「まいた」ことがあると自慢していた。そして戦時中やはり国策映画を撮っていた。
 それが戦後は民主主義を讃える映画を撮る。これらに原節子も出演していた。

 この一方、戦後に対米従属映画で脚本を担当したのは、戦時中に戦意高揚の国策映画の脚本を積極的に書いた沢村勉といった右翼の脚本家だった。権力に命じられて仕方なかったからではなく、もともと積極的だった人もいたわけで、そういう人は敗戦したら対米従属の映画に積極的に関与ということである。
 まるで岸信介だが、そういう人たちはそういうことなんだなと納得である。

 それはともかく、時代劇ではない京マチ子の出演映画で面白かったのは、山本薩夫の『華麗なる一族』である。
 これは公開当時大ヒットしたそうだが、キムタクが出てるテレビ版なんかより面白い。


f0133526_16434634.jpg





ブログランキング・にほんブログ村へ
トラックバックURL : https://ruhiginoue.exblog.jp/tb/30596096
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
名前
URL
削除用パスワード
by ruhiginoue | 2019-05-16 12:21 | 映画 | Trackback | Comments(0)