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by ruhiginoue

見識あるように錯覚させる処世術

 少し前に亡くなった多湖輝という千葉大の先生は、タレント学者として有名だった。周知のとおり専門は心理学で、それを解り易く実用的に説いた著書で知られていた。
 この人が書いていたのだけれど、会議で最後にまとめ役のような発言をすると、何も意見していないのに最も立派な意見を言ったように錯覚してもらえる。
 この手をいつも使っている人が組織内で偉そうにしていることが、よくある。だから、この手を自分で上手く使用することもできるし、そんなことばっかりやっている人がいるのだから気をつけるべきでもある、というわけだ。

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 かつて『朝まで生テレビ』という番組の初期には、最後に今朝の朝刊の見出しを紹介していて、これを担当している元読売で「評論家」の塩田丸男が、多湖輝の指摘する処世術を実行していた。
 このさい塩田丸男は、パネリストとして出演していた者たちが皆それなりに熱を込めて議論していたこと対して、後から「上から目線」で勝手なことを放言し、そうすることで自分こそ最も見識があるかのように装っていた。いつも、みんなの話を聞いたうえで「私の場合はこう考えます」というのではなく「みんな議論のレベルが低いね」という意味のことを偉そうに言い放つのだった。

 もともと、テレビ朝日の番組で塩田丸男は、権勢に媚びて弱い者いじめの処世術であったから、多湖輝が指摘する処世術もやって当然だったのだろう。
 ただ、『朝まで生テレビ』のことは雑誌などで「見ていて不愉快」と指摘されていた。
 こんな反応だったのだから、やり方が上手ではなかったということになるし、もしかすると、テレビにレギュラー出演して権力にすりよってばかりだったため威張る癖がついてしまい、無意識であり計算してやったことではなかったのかもしれない。

 ところで、これよりもっと程度が低い人と、それに騙されている人たちがいる。
 これは出版関係の労働組合でのことだ。そこで深刻な問題を起こした人が、あまりにも奇行が目立つので知的障害か精神障害ではないかと言われていた。ところが、その問題の人は一見すると知的な印象なので、そんなことないだろうと言う人がいる。

 これは、ちゃんと観察していると判る。誰かが何か見識を発揮すると、そこへすかさず「なっ、だから前に俺が言ったとおりだろう」と、そいつは必ず言うのだ。もちろん前に言ってなどいないし、そんなこと言える頭脳ではない。
 こういう手口を何かで憶えたらしく、それからずっとやっているのだ。

 また、この人は最終学歴を大学中退と自称しているが、実際には中卒である。
 その当時の同級生は口を揃えて「義務教育は出席していれば卒業だけど、その先の高校や大学で単位を取って卒業は不可能なやつだ」と言う。
 そして、入試がなく学歴不問で安価だが卒業は難しい通信制大学に登録だけして、よくある途中で挫折ではなく、はじめからやる気がなく、一単位も取得せず辞めている。これを「最終学歴は大学中退」と自称しているのだ。

 これらの手口に騙されている人が出版業界に何人かいるという話を聞いて、すっかり呆れたものだ。

 とにかく、程度の差はあっても、同じような処世術を駆使する者が各地にいるということだ。みんな気を付けないといけない。




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by ruhiginoue | 2019-09-05 04:53 | 社会