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井上靜に関するblog(網誌)です。下記の著書を読んでもらえたら嬉しく存じます。


by ruhiginoue

山村聰がふんして美化された山本五十六

 前回の続きで映画『トラ!トラ!トラ!』について。
 アメリカ公開版にはない皇居の場面で東洋的な音楽が流れたが、メインテーマ曲は、多くの日本人が『黒田節』に似ていると感じる。
 これは音楽を担当したハリウッドの作曲家ジェリー=ゴールドスミスが、日本的にするため雅楽の『越天楽』を捩ったような旋律にしたからだ。『黒田節』は黒田藩の侍が『越天楽』に「酒は~飲め~飲め~」という歌詞を付けたと言われている。
 それで、オーケストラに琴が加わり『越天楽』ふうの旋律を奏するから、外国人はオリエンタルでエキゾチックな曲と思うが、日本人は『黒田節』を連想するわけだ。
 このようにオーケストラに琴が入るのは、伊福部昭より十年以上前にゴールドスミスがやっていたことになるが、伊福部昭が作る曲は日本的にするため全て故意のモノフォニックであるのに対し『トラ!トラ!トラ!』のテーマは対位法的で、和風にしようとしているのに西洋的な技巧と感覚で作られている。

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 この曲とともに画面に現れる山本五十六は、名優中の名優といわれる山村聰が扮している。
 他にハリウッド映画で山本五十六に扮したのは『ミッドウェー』での三船敏郎で、彼には日本映画『長官山本五十六』の主演もある。
 また、『人間の証明』の映画化で三船敏郎が演じた国会議員を、その後の連続テレビドラマ化では山村聰が演じている。しかし役柄は家庭の問題を抱える人だから、国会議員という設定だけで、政治家として活躍する場面はない。
 そして、三船敏郎が政治家を演じたのは『人間の証明』くらい(ほかになにかあっただろうか?)で、もともと三船敏郎は政治家役は得意ではない。
 それに対して山村聰は政治家の役は得意で、総理大臣を何度も演じている。ハリウッド映画で大統領といえば名優中の名優ヘンリー=フォンダというのと同じくらいだ。どちらも現実には存在しないほど理想的だからSFが多い。ヘンリー=フォンダの大統領は『未知への飛行』や『メテオ』、山村聰の総理大臣は『世界大戦争』『ノストラダムスの大予言』『ゴジラVSキングギドラ』、テレビ版『日本沈没』という具合に。

 そして山村聰は、若いころに『蟹工船』の映画化で脚本・監督・主演をしているし、さりげなく東大出だ。
 だから山村聰の個性のため『トラ!トラ!トラ!』の山本五十六は、他の劇映画やテレビドラマでの描き方と特に違わないのに、非常に良識的で知性的と感じる。むしろ三船敏郎が主演した『長官山本五十六』の方が、内容的には美化しすぎというくらいだが、それより山村聰の山本五十六のほうがはるかに美化された感じになっている。  
 だから映画を観て真に受けてはいけない。



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by ruhiginoue | 2019-12-14 05:08 | 映画