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井上靜に関するblog(網誌)です。下記の著書を読んでもらえたら嬉しく存じます。


by ruhiginoue

大林宣彦を皮肉っていたオリバーストーン

 映画の大林宣彦監督が肺癌のため死去したとのこと。
 彼の映画といえば『漂流教室』が退屈でつまらないと酷評されていたのを、まず思い出す。先日、コロナウイルスの件で『漂流教室』のセリフと同じことを言う人がいるという話題をここで取り上げたら、同じ連想をした人は他にもいたから、それで。

 この楳図かずお原作の映画化は、大島渚など何人かの監督が考えはしたが実現しなかった。それをかなり後になって大林監督が実現したが、漫画にあるサスペンスとパニックが脇に退けられ友情物語に仕立てられていて、それも大袈裟で、そこへ音楽が感情過多どころかわざとらしい流れ方で強調している。
 このことで、原作を知っている人はもちろん知らない人も酷評していた。 

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 しかし、これは大林監督の作風であった。
 そして、これが良いという人と、くだらないと言う人と、評判が別れていた。
 この映画が公開された87年、東京国際映画祭のシンポジウムにパネリストの一人として参加した大林監督は、あまりに発言が情緒的なので、来日して同席のオリバー=ストーン監督から「伝道師のようだ」と皮肉られていた。
 この年は、ストーン監督自らのベトナム戦争体験を基にした『プラトーン』がアカデミー賞をさらい話題だったが、同時期に国防省宣伝映画と言われた『トップガン』も大ヒットしていて、これを同席上でストーン監督は「嘘で戦争を美化する軍国主義映画」と批判していた。

 そして、ストーン監督が戦争と平和の問題などを映画で追及しつづけたいと語るのに対し、大林監督は自分の個人的な思い入れで映画を撮るのだと強調した。
 ただ、大林監督も広島の出身で反戦平和への想いは強かったと言われる。ただ、人柄も作風も穏やかで、映画はノスタルジー一辺倒だっただけ。これが良いという人がいるのだ。
 一方ストーン監督は、人柄も作風も強烈で、映画の訴えかけは凄いが、社会派というよりセンセーショナリズムであると嫌う人もいる。

 また、あの東京国際映画祭の当時、映画ファンの間で、こうも言われていた。
 大林監督の作風は好きだという人が国内では一定いても、国際的に通用する普遍性があるかというと無いから、日本の映画が日本以外では通用しなくなってきたのは大林監督のような作風と好む観客が少なくないためであろう、と。

 そういうことを考えるネタになる人と作の大林宣彦監督であった。




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by ruhiginoue | 2020-04-18 04:45 | 映画