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by ruhiginoue

「君が代」強要合憲判決は原告側の戦術的戦略的失敗

 無様にも原告は「不当判決」と負け犬の遠吠えをしています。手前のお粗末を棚に上げて。「君が代」を国歌に法定させてしまった政治的敗北を司法で解決しようとしても駄目。
 自分の思想信条に反することを仕事で強いられることは、どんな職業にもあります。公務員は特にでしょうし、裁判官など最たるものです。個人的に死刑制度に反対でも、最も重い刑罰が相当という場合は、その制度がある以上、死刑判決とせざるを得ません。団藤重光元最高裁判事の著書「死刑廃止論」を読んで、死刑制度廃止すべきと考えるようになった裁判官はけっこういるはずです。この本は極めて説得力があり、これを読んで反論したうえで死刑制度存続を主張した人は、まずいないほどですから。
 自分の信念に反して職業上の義務から「こいつを殺せ」という命令をしなければならないことに比べたら、嫌悪する国歌の演奏に協力させられることなど、もちろん苦痛ではあろうけれど、比較的軽いものだと考えることができます。
 そうなると、当該判決が「信条に反する行為を業務としてさせられたからといって信条そのものの否定とはならない」というのも、屁理屈とばかり言ってはいられないでしょう。裁判官の身になれば、認めてくれると考える方がどうかしてます。
 だから、藤田最高裁判事の反対意見のとおり、「拒否する者にわざわざやらせなくても済んだかどうかで差し戻すべき」を、最初から原告の方で主要な争点とすべきでした。そのうえで、「君が代」が気に入らないなら、どうやって国歌の地位から引きずり落とすかを別に考えるべきです。ついでに言うと、藤田さんは保守反動ですよ。もともと行政法学者だし。行政法学界は、塩野宏さん(御用学者とはこの人のための称号)が、日本一偉いところです。それと藤田さんが相容れない人ではありません。だけど行政法学者出身判事だから、行政法コメンタール発想をしただけです。同じ発想を、原告もすべきでした。
 ところが、「君が代」の歴史的経緯と政治性と芸術的嗜好というぐあいに、裁判で必要不可欠とは言えない問題を、どうしてもしたくてしょうがなかったようです。 個人の信条と公務員としての義務の関わりが争点のはずなのに、それを横に退けて、思想とか世界観の話を、ついしたくなる心情は解りますが、裁判は勝つか負けるかの駆け引きの世界ということを、原告らは忘れていたようです。
 あきらかに、原告側の戦術的失敗でした。
 そのうえ、完敗で敵を増長させてしまうし、生徒の親たちからは、「会社だったら即刻クビなのに教師は甘いな」と言われ、生徒たちからは「生徒には不合理で屈辱的な校則に決まりだから従えと言っているくせに」などと突き放される。
 社会的影響という戦略でも失敗でした。

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by ruhiginoue | 2007-03-10 01:56 | 司法